1999 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン糖取り込み促進作用におけるフォスファチジルイノシトール代謝の重要性
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11671119
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
奥屋 茂 山口大学, 医学部, 助手 (20214083)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 輝昌 山口大学, 医学部・附属病院, 医員(臨床)
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Keywords | インスリン依存性糖取り込み / フォスファチジルイノシトール / GLUT4translocation / phosphatidylinositol-3-kinase / PI(3,4,5)P_3 / PI(3,4)P_2 / SHIP(SH2-containing inositol 5-phosphatase) |
Research Abstract |
インスリンによる糖輸送促進にはPI(3)K(phosphatidylinositol-3-kinase)活性化が必須である。下流のシグナルとしてはPI(3,4,5)P_3が最も重要と考えられているが、PI(3,4)P_2の役割も否定できない。そこで、これらPI(phosphatidylinositol)の糖輸送促進機構における役割を検証するため、PIP_3からPIP_2を生ぜしめるSHIP(SH2-containing inositol 5-phosphatase)を3T3-L1脂肪細胞に過剰発現させ、インスリン刺激による糖輸送を検討した。さらに、PI代謝は細胞膜上で行われていることが想定されるため、細胞膜移行シグナルを付加したミリストイル化SHIP(m-SHIP)も作製し、wild-type SHIP(w-SHIP)との違いも検討した。 3T3-L1脂肪細胞に、LacZ(コントロール)、w-SHIPやm-SHIPcDNAを組み込んだアデノウイルスを感染させ、3〜5日後に実験に供した。w-SHIP・m-SHIP過剰発現をウエスタンブロットで確認後、糖輸送活性は、10^<-9>〜10^<-7>Mインスリン存在・非存在下の2-deoxy glucose取り込み量で測定した。さらに、各細胞全体でのGLUT4発現量や、10^<-7>Mインスリン依存性のGLUT4 translocationを検討するため、total lysateやインスリン非処理・処理後の細胞膜分画を用いてウエスタンブロットを施行した。 コントロール細胞に比べ、w-SHIPあるいはm-SHIP過剰発現3T3-L1脂肪細胞では、10^<-7>Mインスリン存在下での糖取込みはそれぞれ平均1.7倍、2.7倍増加した。また、コントロール細胞に比べ、w-SHIPおよびm-SHIP過剰発現3T3-L1脂肪細胞では、細胞全体でのGLUT4発現量自体には特に差はなかったが、10^<-7>Mインスリン存在下での細胞膜分画でのGLUT4発現量は、SHIP特にm-SHIP発現細胞で増加する傾向にあった。 SHIP特にm-SHIPの過剰発現下では、細胞膜上のPIP_3が減少しPIP_2が増加することが推測される。以上の検討の結果、インスリンによる糖輸送促進機構、すなわちGLUT4 translocationには、PI(3)K下流のシグナルとしてPIP_2がより重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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