2001 Fiscal Year Annual Research Report
家族性内分泌腫瘍の発症前診断と遺伝子解析の臨床応用
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11671174
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
岩崎 博幸 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター・総合外科, 講師 (90254177)
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Keywords | 家族性甲状腺癌 / MEN |
Research Abstract |
家族性甲状腺髄様癌症例の家系調査 [今までの経過] 患者数3名、保因者2名の甲状腺髄様癌1家系において、コドン609の変異が認められた。この家系(A)において、褐色細胞腫の罹患者はいなかったため、現在のところMEN-IIaへの移行は認めなかった。この家系において、過去に甲状腺片葉切除が行われた2名に、残存甲状腺内に再発を認めた。1名は80才で経過観察、妹は76才で再手術(甲状腺全摘)施行。非侵潤性甲状腺髄様癌であった。リンパ節転移は認めなかった。両名は40才台に甲状腺髄様癌を発見され、30年以上たって対側にも出現したことから、この家系の甲状腺癌は、非常に発育の遅いタイプであり、腫瘍が認められた時点で甲状腺全摘を行えば生命予後は心配ないことがわかった。これは、第39回万国外科学会で発表した。 [今年度分かったこと] 今年度新たに2家系の家族性甲状腺髄様癌を認め、3家系を対象とした。家系Aは、MTC3名、家系BはMTC1名に遺伝子変異があり、FMTCの疑いと診断し、家系Cは、MTC5名、褐色細胞腫1名で、多内分泌腺腫症(MEN-IIa)と診断した。それぞれの家系においてRET遺伝子の異常を調べた。 家系A, B, Cにおいて、RET遺伝子のコドン609、620、634にそれぞれ、家系内同一の点変異を認めた。変異はいずれもCysteinをコードしているTGCのコドンに認められた。現在のところ保因者は、それぞれの家系で2名ずつ6名認められた。発症年齢は、家系AとBが30歳台、家系Cは40歳代であり、今までの報告と矛盾しなかった。家系Cにおいて甲状腺全摘をされていない患者2名に残存甲状腺内に再発を認めた。 これらの変異は、MEN-2およびFMTCですでに報告された部位である。甲状腺全摘をしないといずれ再発することが確認されたので、今回明らかになった患者で甲状腺全摘がされていない患者や保因者に対し、再発や発症がないかFollow upが必要である。今後これらの家系の調査希望者において、遺伝子診断を行い、ガイドライシに沿ったプライバシーの保護と保因者の治療を検討したい。
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