1999 Fiscal Year Annual Research Report
生体部分肝移植の適応拡大を目指した肝移植遺伝子治療の開発
Project/Area Number |
11671183
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
若林 剛 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50175064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀井 秀策 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10286495)
島津 元秀 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70124948)
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Keywords | 肝移植 / 遺伝子治療 / 肝再生 / IL-1Ra / 再灌流障害 |
Research Abstract |
われわれは移植肝再灌流障害の予防と免疫寛容の確立を目的としたIL-1Ra遺伝子導入による肝移植遺伝子治療を計画し,さまざまなラット肝移植モデルでの検討を行い,予想外の結果も見出したのであわせて報告する.【方法】炎症・免疫反応に作用しうるinterleukin-1受容体拮抗物質(IL-1Ra)を導入遺伝子に選択した.hIL-1RacDNAをアデノウイルスベクターに挿入したAdexIL-1Raを作成し,肝再灌流障害モデル,肝拒絶モデル,肝再生モデルを用いてその効果を検討した.【結果】いずれのラットモデルでも,治療群ではAdexIL-1Ra(108PFU/ml)静注後24時間で血中IL-1Raは10μg/mlまで上昇し以後2週間過剰発現を示した.IL-1Raの過剰発現により肝再灌流後のTNF/IL-6の上昇は有意に抑制され,肝再灌流障害によるGOT/GPTの上昇も有意に抑制された.また,拒絶反応に関しては治療群で遅れて出現する傾向が認められた.しかし,肝切除後の肝再生に関しては治療群で有意に抑制されることが判明し,IL-1が肝再生促進作用を有する可能性とAdexIL-1Raの臨床応用に向けて新たな問題点が明らかになった.【結語】AdexIL-1Raによる肝移植遺伝子治療は,効果は一過性であるが肝再灌流障害予防と早期拒絶反応抑制の目的で十分臨床応用を目指せることが示された.しかし,本研究でIL-1の肝再生促進作用が判明し,部分肝移植に関しては慎重な検討が望まれる.
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