Research Abstract |
家族性大腸腺腫症は発生頻度稀で,標本は貴重なものであるので,今年度はまず,孤発性腺腫における蛋白レベルでのCOX-2発現を免疫組織化学的に検討できるようにした.孤発性腺腫96病変(内視鏡的に摘除,または大腸癌切除標本に併存していたもの),正常大腸粘膜49検体,大腸癌54病変を対象とした.ホルマリン固定した検体を4μmに薄切し,ウサギ抗ヒトCOX-2抗体を一次抗体としてABC法にて染色を行った.筋層または粘膜筋板の染色強度を2+として内部標準とし,0〜3+の4段階評価を行った.正常,腺腫,癌それぞれの上皮および間質におけるCOX-2発現を比較した.腺腫を径によりsmall:φ≦6mm,medium:6mm<φ≦12mm,large:12mm<φに分類した.腺腫細胞におけるCOX-2発現は,平均1.9+(0:5%,1+:25%,2+:43%,3+:27%)であり,正常大腸粘膜の0.7+(0:33%,1+:61%,2+:6%,3+:3%)に比べて有意に増強していた.大腸癌における発現も2.4+(0:0%,1+:17%,2+:38%,3+:48%)で,有意にCOX-2発現が増強していた.腺腫small群,medium群,large群のCOX-2発現はそれぞれ1.2+、2.0+、2.5+であった.径が大きいほどCOX-2発現が増強し(P<0.001),large群では癌と同程度のCOX-2発現を認めた.間質細胞におけるCOX-2の発現は,正常0.9+,small群1.9+,medium群1.9+,large群1.8+,癌1.8+であった.腺腫の間質におけるCOX-2の発現は,正常より強く癌と同程度であった.孤発性腺腫においては,腺腫径が小さい時からCOX-2が蛋白レベルで発現しており,その発現量はsize-dependentに増強していた.
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