Research Abstract |
現在まで我々は,ヒト膵管癌の実験系であるハムスター膵発癌系を用いて,細胞外マトリックス分解酵素(MMP)が,その発生,進展に深く関わっている事,担癌動物における血清中のMMPを定量化する事で,膵癌の血清診断が可能である事を証明してきた。今回,これら実験結果を踏まえて,MMPの特異的阻害剤である,OPB-3206を経口投与することで,その発癌抑制効果を検索した。ハムスター膵発癌系に,OPB-3206をそれぞれ0.1%(group I),0.2%(group II)混餌投与し,可逆性病変である過形成(Hyperplasia),前癌病変である異型過形成(Atypical hyperplasia),および微小浸潤癌(Minimal invasive carcinoma)の発生個数をコントロール群(Control)と比較検討した。その結果,投与群では両群ともコントロール群に比して浸潤癌の発生個数が有意に減少しており(Control,4.82±2.60;group I,1.87±1.19;group II,2.40±1.01,p<0.05),Atypical hyperplasiaにおいても有意な減少がみられた(Control,2.81±1.47;group I,0.87±0.92;group II,1.73±1.44,p<0.05)。また,発生した病変からMMP蛋白を抽出しゼラチンザイモグラフィーにて酵素活性をみると,Control群では潜在型MMP-2に対して活性型MMP-2のバンド強度が3倍増幅しているのに比べ,group I,group IIでは潜在型MMP-2の発現が増加し,活性型MMP-2の発現減少がみられた。以上の結果より,OPB-3206はMMPの活性化を阻害することで,発癌モデルにおける膵癌の発生抑制効果を示していることが確認された。
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