1999 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトのCYP1B1遺伝子の多型と乳癌・肺癌感受性との関係
Project/Area Number |
11671349
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
島田 力 大阪府立公衆衛生研究所, 薬事指導部, 主任研究員 (50158961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 清 大阪府立公衆衛生研究所, 公衆衛生部, 主任研究員 (10250276)
阿部 達生 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (60079746)
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Keywords | CYP1B1乳癌 / 肺癌 / 遺伝子多型 / 発癌性物質 / 代謝的活性化 |
Research Abstract |
本研究は以下の点を明らかにすることを目的としている。一つは、ヒトのCYP1B1酵素は、乳癌や肺癌の原因物質と考えられる多くの癌原物質の代謝的活性化に関与するが、CYP1B1遺伝子の多型が乳癌や肺癌の感受性の個人差につながるかどうかを明らかにすることである。すなわち、遺伝子多型の結果もたらされた変異蛋白質の機能を調べることで、ヒトの癌感受性の個人差についての基礎的知見を得ようとするものである。もう一点は、実際にヒトにおいてCYP1B1の遺伝子多型がどのようになっているかを、症例対象研究により調べることである。後者の研究については、CYP1A1の遺伝子多型も同時に調べ、二つの遺伝子多型とヒトの乳癌・肺癌との関係を明らかにし、ヒトの癌感受性の個人差の理解につなげることを目的としている。今年度は主に前者について取り組み、一部ヒトの遺伝子多型についても検討を開始している。 CYP1B1の変異体の機能を調べるため、まず、CYP1B1ならびにその変異体cDNAとNADPH-P450還元酵素遺伝子を大腸菌内で発現させた。2種類のCYP1B1遺伝子多型(アミノ酸置換、119番目のAla→Serと432番目のLeu→Val)について検討をおこなった。発現した蛋白質について、多種類の癌原物質やエストロジェンの代謝を指標に活性の測定をおこない、変異体の機能を調べた。その結果、119番目のアミノ酸をAla→Serに変化させた場合、代謝活性に野生株と大きな差を示さなかったが、432番目のアミノ酸のLeu→Val変異体が癌原性芳香族多環炭化水素の代謝的活性化とエストロジェンの4位の水酸化反応に高い活性のあることを見出した。このことは、CYP1B1遺伝子多型により癌原物質への感受性の個人差が表れうることを示しているものとして興味深い知見である。ヒトのCYP1B1遺伝子多型については、検討を開始しているが、現在のところ日本人と欧米人による解析により、多型の頻度に人種差のあることを見出している。この点については、今後さらに研究を進める。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Shimada, T., et al.: "Recombinant human cytochrome P450 1B1 expression in Escherichia coli"Arch. Biochem. Biophys.. 357. 111-120 (1998)
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[Publications] Shimada, T., et al.: "Selectivity of polycyclic inhibitors for human cytochromes P450 1A1, 1A2, and 1B1"Chem. Res. Toxicol.. 11. 1048-1056 (1998)
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[Publications] 島田力、鎌滝哲也: "薬物・毒物・癌原物質の代謝に関与するヒトのチトクロームP450"化学と生物. 36. 659-663 (1999)
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[Publications] 島田力: "ヒトのP450遺伝子の多型と化学物質の生体影響"中毒研究. 12. 377-382 (1999)
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[Publications] Shimada, T., et al.: "Metabolism of benzo[a]pyrene to trans-7, 8-dihydroxy-7, 8-dihydrobenzo[a]pyrene by recombinant human cytochrome P450 1B1 and purified liver epoxide hydrolase"Chem. Res. Toxicol.. 12. 623-629 (1999)
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[Publications] Shimada, T., et al.: "Catalytic properties of polymorphic human cytochrome P450 1B1 variants"Carcinogenesis. 20. 1607-1613 (1999)