1999 Fiscal Year Annual Research Report
脳挫傷と血管内皮損傷:血管内皮への白血球接着に始まる細胞障害の機序とその治療
Project/Area Number |
11671397
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山本 隆充 日本大学, 医学部, 助教授 (50158284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越永 守道 日本大学, 医学部, 助手 (30267067)
川又 達朗 日本大学, 医学部, 助手 (20234122)
片山 容一 日本大学, 医学部, 教授 (00125048)
加納 恒男 日本大学, 医学部, 助手 (40277413)
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Keywords | 脳挫傷 / 脳血流 / 白血球 / 血栓形成 / 脳浮腫 / 免疫抑制薬 / ラット |
Research Abstract |
挫傷脳、特に脳挫傷辺縁部における血管内皮細胞障害と内皮細胞への多核白血球接着の経時的変化を明らかにするため、ラット皮質脳挫傷モデルを用いて実験を行った。14C-iodo-antipyrine autoradiographyによると、脳血流は、挫傷脳とその周辺の広い範囲で、著明な低下をみた。H-E染色による組織学的な検討では、脳挫傷中心部では、坐滅した組織内に漏出した白血球がみられ、時間経過とともに増加した。辺縁部では血管内に白血球の集積がみられた。これは受傷直後から観察され、24時間から48時間で顕著となった。免疫抑制薬のFK506とcyclosporinA(CsA)を外傷直後に投与すると、2週間後の挫傷壊死組織の体積は、有意の減少を示した。FK506は高濃度では、効果が減弱するのに対して、CsAの効果は用量依存性であった。脳浮腫形成の程度を比重法で検討してみると、FK506投与群では、脳挫傷中心部では浮腫形成がむしろ悪化したのに対して、挫傷辺縁部では脳浮腫の程度が明らかに軽減した。また、血管内への白血球の集積に対する影響を調べたが、免疫抑制薬の投与により、白血球数は減少する傾向にあったが、有意の差ではなかった。以上の結果は、白血球の血管内集積は、挫傷脳辺縁部における浮腫形成、そして細胞障害と時間経過が類似していることを示している。免疫抑制薬は挫傷脳の細胞障害を抑制するが、白血球の血管内接着を抑制する以外の機序、例えばCa2+の細胞内流入に伴うカルシニューリンの阻害などが考えられる。
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