1999 Fiscal Year Annual Research Report
吸入麻酔の脳微小循環動態に及ぼす影響 -蛍光ビデオ顕微鏡法によるレオロジー的分析-
Project/Area Number |
11671498
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Research Institution | Shimane Medical University |
Principal Investigator |
中島 年人 島根医科大学, 医学部, 助手 (00284050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新見 英幸 国立循環器病センター, 脈管生理部, 部長 (50026134)
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Keywords | 生体蛍光顕微鏡法 / 脳軟膜微小循環 / ハロセン / 脳微小血管拡張 / 管壁ずり速度 / 管壁応力 / 血流依存のレオロジー的因子 / NO合成酵素 |
Research Abstract |
生体蛍光顕微鏡法を用い,ネコ脳軟膜微小循環に対するハロセンの血管拡張を観察し,ハロセン吸入後にも血管が拡張する特異な現象を見出した.この吸入終了後拡張現象を血流依存のレオロジー的側面から定量的に分析を行った.[方法]7匹のネコをクロラロースで麻酔導入後,気管切開し,30%O2-70%N2で機械換気した.頭蓋窓など外科処置約1時間後,1%ハロセンを吸入,30分間持続した.血圧(P)は大腿動脈にカテーテルを挿入し測定した.FITC一蛍光標識赤血球及びRITC一蛍光標識デキストランを大腿静脈注入法により,蛍光顕微鏡下で脳微小循環を可視化した。この像を高感度ビデオに記録した.ビデオ画像から,管径50-100ミクロンの細動・静脈を選択し,血管内径(D)及びそこを流れる赤血球速度(V)を計測した.吸入終了時および終了から8-15分後の血管径,赤血球速度,血圧データ値を用いて,管壁ずり速度(SR),管壁応力(WT)を式(1),(2)から算出した.SR=V/D・・(1),WT=P×D・・(2) 細動脈(7本),細静脈(6本)の血管拡張を吸入終了後からの変化率を用いて相互関係を調べた.[結果および考察]ハロセン吸入により血圧及び赤血球速度は低下,血管径は有意に増加した.ハロセン投与終了により血圧と赤血球速度は吸入前値方向に増加したが,血管径はさらに拡張を示した.吸入終了後の血管拡張率と壁ずり速度(SR)の間には,SRの変化率が増加すると細動静脈の血管拡張率は増加し,この関係は直線的であった.さらに細動脈の血管拡張率は管壁応力(WT)の変化率が増加すると共に直線的に増加した.脳微小血管は血圧や赤血球速度と異なり,ハロセン投与終了後さらに拡張する事実が示された.この脳微小血管拡張率は管壁ずり速度(SR)および管壁応力(WT)と正に相関しているので,その血管反応に血流依存のレオロジー的因子(壁ずり速度、壁応力)の関与が考えられる.脳微小血管拡張の機序には,壁ずり速度,壁応力を介するNO合成酵素の重要性が示唆される.
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