2000 Fiscal Year Annual Research Report
虚血性脳疾患に対する無麻酔下軽微脳低温・薬物補充療法導入のための基盤確立
Project/Area Number |
11671504
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
八杉 巧 愛媛大学, 医学部, 助手 (30210248)
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Keywords | 脳低温療法 / 血液脳関門 / 脳虚血 / ミクログリア / テアニン |
Research Abstract |
緑茶の旨み成分であるテアニンの脳保護作用について検討した。スナネズミの5分間脳虚血モデルで,テアニンの虚血前脳室内投与は海馬CA1領域の虚血性ニューロン死に対して何ら影響も示さなかったが,3分間虚血による同ニューロン死に対し,50mM投与では極軽微の,125mMでは約50%,500mMでは約70%と用量依存的なニューロン保護効果を示した。テアニンの虚血前脳室内投与は1時間の局所脳虚血モデルでも,対照群,テアニン125mM投与群,テアニン250mM投与群,テアニン500mM投与群の補正梗塞体積が,それぞれ162.9±39.9mm^3,133.9±58.1mm^3,76.9±42.0mm^3,58.3±14.1mm^3と,テアニン250mMおよび500mM投与群で有意な梗塞体積の縮小効果を認めた。さらに,スナネズミの3分間脳虚血モデルで,テアニン5mg/kg/dayの虚血前後の慢性経口投与でもニューロン保護効果が認められた。しかし,テアニンの虚血前投与だけ,あるいは虚血後のみの投与ではニューロン保護効果が弱かった。 これらの知見をもとに,スナネズミ5分間脳虚血モデルで軽微脳低温処置とテアニンの虚血後慢性経口投与によるニューロン保護効果を検証した。軽微脳低温処置としては,虚血後1〜6時間まで32℃の短時間低温処置群と虚血後1〜24時間まで35℃の軽微低温処置群を作製した。ニューロン保護効果の判定は虚血30日後とした。対照群,短時間低温処置群,軽微低温処置群,短時間低温処置+テアニン投与群,軽微低温処置+テアニン投与群の残存ニューロン数は,それぞれ5%,19%,50%,67%,72%で低温処置とテアニンの併用により有意なニューロン保護効果が得られた。 これまでに多くの脳保護薬が開発されてきたが臨床応用に至った薬剤はほとんどない。動物実験における低温の脳保護効果は明らかであり,薬剤単独あるいは低温処置単独でニューロン保護効果が弱くとも両者を併用することにより相加的なニューロン保護効果が期待できる。
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[Publications] Si Q: "A serum factor enhances production of nitric oxide and tumor necrosis factor-a from cultured microglia"Exp Neurol. 162. 89-97 (2000)
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[Publications] 柳瀬尚人: "グルタミン酸毒性と虚血神経細胞死"Brain Medical. 12. 176-180 (2000)
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[Publications] Kataoka Y: "Neovascularization with blood-brain barrier breakdown in delayed neuronal death"Biochem Biophys Res Com. 273. 637-641 (2000)
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[Publications] Kakuda T: "Protective effect of γ-glutamylethylamide (theanine) on ischemic delayed neuronal death in gerbils"Neurosci Lett. 289. 189-192 (2000)
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[Publications] Yanase H: "Brain Hypothermia"Springer-Verlag. 14 (2000)