2000 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性麻酔薬による一酸化窒素生成抑制作用におけるチトクロームP450の役割
Project/Area Number |
11671518
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
伊良波 浩 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (30193692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
畑埜 義雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70115913)
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Keywords | 血管内皮細胞 / 揮発性麻酔薬 / チトクロームP450 / 無機フッ素 |
Research Abstract |
揮発性麻酔薬がアセチルコリンによる内皮依存性弛緩反応を抑制することは良く知られた事実であるが、その機序は未だ解明されていない。一方、揮発性麻酔薬は肝ミクロゾーム内のチトクロームP450サブタイプ2E1で代謝され、無機フッ素を生じることが知られている。近年、この酵素が血管内皮細胞にも存在することが明らかとなった。麻酔薬の代謝の結果生じた無機フッ素がG蛋白を修飾し、細胞内情報伝達機構に影響を与えることにより、アセチルコリンによる内皮依存性弛緩反応を抑制している可能性がある。本研究の目的はチトクロームP450 2E1による麻酔薬の代謝物である無機フッ素のG蛋白への作用が揮発性麻酔薬のアセチルコリン惹起一酸化窒素合成抑制の原因であるという作業仮説を検証することである。 平成11年度はアセチルコリン惹起内皮依存性弛緩反応に及ぼす揮発性麻酔薬(ハロタン、イソフルラン、セボフルラン)の影響をチトクロームP450阻害薬であるDCC(diethyldithiocarbamate)の存在及び非存在下で観察した。その結果、ハロタンの内皮依存性弛緩反応抑制作用はDCC存在下では減弱する一方、イソフルラン、セボフルランはDCC存在下でもその抑制作用は変化しなかった。このことから、ハロタンのみがチトクロームP450の影響を大きく受けると考えられたが、血中無機フッ素濃度はセボフルレン麻酔で最も高いという臨床的事実とは合致しない。 そこで、平成12年度はDCCとは作用機序が異り、よりチトクロームP450に特異性の高い阻害薬である17-ODYA(17-octadecynoic acid)を用いて、アセチルコリン惹起内皮依存性弛緩反応に及ぼす揮発性麻酔薬の影響を観察した。17-ODYA単独ではアセチルコリンによる内皮依存性弛緩反応には影響しなかったが、セボフルランによる弛緩反応抑制作用を減弱させた。この結果より、セボフルランはチトクロームP450活性により影響を受けることが確認された。 来年度及び再来年度はチトクロームP450によるセボフルランの代謝産物である無機フッ素が内皮依存性弛緩反応抑制機転の原因であることを証明するために、チトクロームP450活性の測定及びフッ素産生量の定量を行う予定である。
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[Publications] Ogawa K,Yamada S,Mizumoto K,Iranami H,Hatano Y: "Inhibitory Effects of Halothane, Isoflurane, Sevoflurane, and Pentobarbital on the Constriction Induced by Hypocapnia and Bicarbonate in Isolated Canine Cerebral Arteries"J Neurosurg Anesthesiol. 12(2). 99-106 (2000)
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[Publications] Kinoshita H,Ishikawa T,Hatano Y: "Role of K+ channnels in augmented relaxations to sodium nitroprusside induced by mexiletine in rat aortas"Anesthesiology. 92. 813-820 (2000)