1999 Fiscal Year Annual Research Report
多臓器不全の病態解明をめざした動物モデルの構築とその評価
Project/Area Number |
11671526
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
小池 薫 日本医科大学, 医学部, 助手 (10267164)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻井 厚子 日本医科大学, 医学部, 助手 (50227401)
山本 保博 日本医科大学, 医学部, 教授 (70125079)
|
Keywords | ホスホリパーゼA_2 / 腸管 / 虚血 / 再潅流障害 |
Research Abstract |
我々は以前、ラットに小腸虚血・再潅流を施行すると、好中球・活性酸素・phospholipase A_2(PLA_2)を介するメカニズムで小腸障害と遠隔臓器障害(肺障害、肝障害)を発生することを報告した。一方、我々は文部省科学研究費補助金(平成7年〜9年)を用いた臨床研究で、全身性炎症反応症候群・敗血症・急性呼吸促迫症候群・多臓器不全の患者では、PLA_2のサブタイプであるllA型PLA_2が血清中に上昇することを確認した。そこで平成11年度の本研究では、ラットにllA型PLA_2に対する阻害剤を前投与すると、小腸虚血・再潅流による小腸、肺、肝障害の発生が予防ができるかどうかを検討した。ラットにllA型PLA_2の阻害剤(S-5920/LY315920Na、20mg/kg、iv)を実験30分前に投与してから45分間の上腸間膜動脈血行遮断と2時間の再潅流を行い、小腸障害と肺障害の程度を^<125>l-アルブミンの血管外漏出の程度で、肝障害の程度を血清GPTの変化で評価した。すると、小腸虚血・再潅流に続発する小腸障害と肝障害はllA型PLA_2阻害剤投与により抑制されなかったが、肺障害の出現は予防された。小腸虚血・再潅流を行うと再潅流直前に門脈と末梢静脈血中のPLA_2活性が上昇したが、llA型PLA_2の阻害剤投与によりこれらの上昇も完全に抑制された。invitroで検討すると、1)小腸虚血・再潅流は小腸組織のPLA_2活性を減少し、肝のPLA_2活性には影響を与えず、肺のPLA_2活性を上昇させること、2)llA型PLA_2の阻害剤投与によりこれらの臓器のPLA_2活性はすべて減少すること、3)小腸、肺のPLA_2活性の大部分がllA型PLA_2に由来することが判明した。以上より、小腸虚血・再潅流はllA型PLA_2の活性化という過程を介して肺障害を惹起することが判明した。一方、小腸虚血・再潅流はllA型PLA_2とは無関係に小腸障害・肝障害を誘発することが示唆された。
|