2000 Fiscal Year Annual Research Report
周術期における副交感神経活動が冠血管攣縮発生と血管内皮機能に与える影響
Project/Area Number |
11671530
|
Research Institution | KURUME UNIVERSITY |
Principal Investigator |
渡邉 誠之 久留米大学, 医学部, 講師 (10201196)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加納 龍彦 久留米大学, 医学部, 教授 (50040605)
金子 真也 久留米大学, 医学部, 助手 (00224600)
|
Keywords | 冠攣縮 / 副交感神経 / 心筋虚血 / 虚血性心疾患 / コリンエステラーゼ阻害薬 |
Research Abstract |
周術期における心筋虚血の発生に冠動脈攣縮が関与する。しかしながら、冠動脈攣縮の原因は明らかでない。今回我々は虚血性心疾患患者において冠動脈攣縮による心筋虚血発生に対する副交感神経の関与を検討した。【方法】冠動脈再建患者32名を対象とした。患者は無作為に2群に分けられた(コントロール群14名、副交感神経刺激群18名)。左内胸動脈採取時にコリンエステラーゼ阻害薬(エドロフォニウム(Edr)0.25mg/kg)を中心静脈から急速ボーラス投与し副交感神経刺激状態を作成した。副交感神経刺激は心拍数の急激な変化で確認した。投与前、投与後20分間血行動態(心拍出量、血圧、心拍数、肺動脈圧、中心静脈圧、心電図PP間隔、PQ時間、QRS時間、ST偏位)を測定した。【結果】Edr投与により全ての患者で除脈化した。RR間隔はEdr投与後2分で平均261msecの延長を来たし(p<0.01)、PQ時間はEdr投与後1分に平均24msecの延長を来たした(p<0.01)。QRS時間は副交感神経刺激により変化し無かった。四肢第II誘導および胸部V5誘導においてST偏位は出現しなかった。収縮期、拡張期血圧、肺動脈圧、中心静脈圧は20分の観察期間中変化はなかった。投与前心拍数と心拍数変化量において負の相関を認めた(r=0.74、p<0.001)。混合静脈血酸素飽和度および心拍出量は投与後5から15分にかけて低下した(p<0.01)。経食道心臓超音波検査において心房収縮能(E波の低下、A波の増高)の低下を認めるも(p<0.01)、観察中心室壁運動以上を検出できなかった。【考察】虚血性心疾患患者に副交感神経刺激状態を心拍数の減少、刺激伝導系の抑制および心房収縮の減少により確認できた。さらに今回の患者全例においてβ遮断薬を内服しており、Edr投与により交感神経の関与は少なく、比較的副交感神経単独の刺激状態を導入でき出来たものと考える。しかし、投与後に明らかな心筋虚血を検出できなかった。血管内皮障害をもつ虚血性心疾患患者においても副交感神経単独刺激で冠攣縮を誘発する可能性は低い事を示唆する。
|