2000 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌の制癌剤抵抗性に関与するアポトーシスシグナルの分子生物学的解析-遺伝子治療の分子標的の確立をめざして-
Project/Area Number |
11671613
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
万代 昌紀 京都大学, 医学研究科, 助手 (80283597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小西 郁生 信州大学, 医学部, 教授 (90192062)
藤井 信吾 京都大学, 医学研究科, 教授 (30135579)
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Keywords | 卵巣癌 / アデノウイルス / アポトーシス / 薬剤抵抗性 / シスプラチン / 遺伝子治療 / IGF-1 / bax |
Research Abstract |
卵巣癌では進行例が多く、その治療において化学療法は重要である。有効例は多いが薬剤に対する抵抗性が、長期予後不良の大きな要因となっている。そこで本研究では化学療法の中心であるシスプラチン(CDDP)の薬剤効果および薬剤抵抗性とアポトーシスとの関連に注目し、これを分子標的とした遺伝子治療により薬剤抵抗性を克服する可能性について検討を進めた。 卵巣癌細胞株を用いた検討で、CDDP感受性株においては薬剤添加後にアポトーシス促進因子Baxの著明な発現とアポトーシスの誘導が確認され、一方耐性株ではアポトーシスは誘導され難く、この時Baxの発現レベルも低かった。すなわちCDDP抵抗性機序にBaxを含むアポトーシスシグナルの誘導障害が関与することが示唆された。そこでBax高発現組替えアデノウイルスを作製し、卵巣癌細胞へBax遺伝子を導入したところ、耐性卵巣癌において著明なアポトーシスと殺細胞効果を認めた。さらにBax遺伝子導入にCDDP又はタキソールを併用したところ、相加的治療効果を認めた。 一方、CDDP抵抗性には、何らかのアポトーシス阻害因子が関与している可能性がある。本研究では、卵巣癌の発生過程とゴナドトロピンの関係に着目し、まず、ゴナドトロピンのひとつであるhCGが卵巣癌の発生母地と考えられている卵巣表層上皮細胞に与える影響を解析したところ、hCGは卵巣表層上皮細胞の増殖を刺激するだけでなく、そのアポトーシスも阻害することで、腫瘍発生に関与する可能性が示唆された。さらにhCGは一部の卵巣癌細胞においてCDDPによるアポトーシス誘導を阻害し、卵巣癌の薬剤抵抗性に関与する可能性が示唆された。 以上のように薬剤抵抗性とアポトーシスとの関連に注目した研究は、最近、注目されつつあり、本研究も今後、この結果を卵巣癌治療に応用しうるよう発展させていきたい。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 鶴田優子: "Combination effect of adenovirus-mediated pro-apoptotic Bax gene transfer with cisplatin or paclitaxel treatment in ovarian cancer cell lines."European Journal of Cancer. (掲載予定). (2001)
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[Publications] 黒田英樹: "Human ovarian surface epithelial (OSE) cells express LH/hCG receptors, and hCG inhibits apoptosis of OSE cells via up-regulation of insulin-like growth factor-1."International Journal of Cancer. 92. 309-315 (2001)
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[Publications] 田村出: "進行卵巣癌患者の予後因子に関する検討"産婦人科の進歩. 51(4). 353-359 (1999)
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[Publications] 万代昌紀: "卵巣癌細胞のアポトーシス抑制に関与する遺伝子群を標的とした新しい癌化学療法の基礎的研究"日本産科婦人科学会雑誌. 51(8). 575-585 (1999)
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[Publications] 鶴田優子: "婦人科癌の浸潤・転移とその臨床「卵巣癌の転移にかかわる遺伝子」"産婦人科の実際. 49(6). 765-774 (2000)
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[Publications] 万代昌紀: "アポトーシスと化学療法"産科と婦人科. 67(6). 754-762 (2000)
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[Publications] 万代昌紀: "新しい治療法の試み、分子標的治療 新女性医学大系44、婦人科悪性腫瘍の薬物・放射線療法"中山書店. 12 (2000)
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[Publications] 万代昌紀: "卵巣がん細胞のアポトーシス抑制に関与する遺伝子群を標的とした 新しいがん化学療法の基礎的研究がん治療のあゆみ、第19巻"(財)がん集学的治療研究財団. 8 (2000)