2000 Fiscal Year Annual Research Report
ベル麻痺の発症機序と病態・治療に関する臨床および基礎的研究
Project/Area Number |
11671696
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
村上 信五 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (80157750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 伸光 愛媛大学, 医学部, 助手 (60304622)
宮本 直哉 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (90219816)
溝渕 陸彦 愛媛大学, 医学部, 講師 (00166042)
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Keywords | ベル麻痺 / ハント症候群 / 神経血流 / 神経内圧 / 単純ヘルペスウイルス1型 |
Research Abstract |
最近の研究からベル麻痺の病因が単純ヘルペスウイルスであることが明らかになってきた。しかし、麻痺発症の機序や病態に関してはまだ不明な点が多く、治療法も一定していない。これまでベル麻痺の病態としてハント症候群と同様に側頭骨内顔面神経の浮腫と神経内圧上昇による血流障害が推測さられているが、十分な研究はなされていない。本研究では、レーザードップラー血流計と圧トランデユーサーを用いて顔面神経減荷術の際に側頭骨内顔面神経の血流と神経内圧を測定した。その結果、ハント症候群ではベル麻痺に比べ垂直部と錐体部、水平部において神経内圧が上昇し、そのため血流が10ml/分/100g以下に低下している症例が多くみられた。また、膝神経節部はベル麻痺、ハント症候群ともに他の部位より血流が多い傾向がみられた。 神経鞘切開前後の血流変化をみてみるとベル麻痺、ハント症候群では神経鞘切開により血流が増加する症例と逆に減少する症例が見られた。傾向として、神経鞘切開前に血流の多かった症例では切開後に血流が減少し、逆に血流の少なかった症例では切開により血流が増加する現象がみられた。神経鞘を切開することは神経内の血管や神経鞘を穿孔している血管を損傷するが、一方では上昇した神経内圧を正常化させる効果をも持ち合わせている。今回の結果は、現在、その可否が問われている減荷術における神経鞘切開の有用性を示すと共に、レーザードップラーによる血流の測定が神経鞘の切開におけるモニターになることを示唆するものである。 また、本研究ではマウスにHSV-1を接種後、抗TCR抗体を用いて免疫能を低下させたり、あるいは抗HSV-1抗体やHSV-1感作T細胞をマウスに人為的に移入し、麻痺発症のメカニズムを検討したが、HSV-1による顔面神経麻痺はウイルス感染により誘発される自己免疫的な機序によりはむしろ、HSV-1の直接的な神経障害により生じることが明らかになった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Chen YH,HSU CJ,Liu TC,Yanagihara N,Murakami S: "Histological rearrangement in the facial nerve and central nuclei following immediate and delayed hypoglossal-facial nerve anastomosis."Acta Otolaryngol. 120. 551-556 (2000)
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[Publications] Yanagihara N,Honda N,Hato N,Murakami S: "Edematous swelling of the facial nerve in Bell's palsy."Acta Otolaryngol. 120. 667-671 (2000)
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[Publications] 村上信五,松田大志,渡邉暢浩,本多伸光,柳原尚明: "経乳突顔面神経減荷術後の聴力低下を予防する手術手技の工夫"Facial N Res Jpn. 20. 129-131 (2000)
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[Publications] 脇坂浩之,木崎久喜,高橋宏尚,本多伸光,村上信五,暁清文: "HSV-1初感染顔面神経麻痺モデルの麻痺治癒後の組織学的検討"Facial N Res Jpn. 20. 46-48 (2000)
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[Publications] 高橋宏尚,本多伸光,木崎久喜,脇坂浩之,羽藤直人,暁清文,村上信五: "単純ヘルペスウイルス1型の再活性化によるマウス顔面神経麻痺モデルの研究"Facial N Res Jpn. 20. 49-51 (2000)
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[Publications] 木崎久喜,高橋宏尚,脇坂浩之,本多伸光,羽藤直人,暁清文,村上信五: "D4+,CD8+ T細胞の抑制によるHSV-1再活性化顔面神経麻痺発現に関する検討"Facial N Res Jpn. 20. 58-60 (2000)
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[Publications] 村上信五,宮本直哉,渡邊暢浩,松田太志: "日本臨床58(4)"αヘルペス感染の臨床、耳鼻咽喉科領域-αヘルペスウイルスによる顔面神経麻痺. 5 (2000)