2001 Fiscal Year Annual Research Report
音響性聴覚障害の発生機序ならびにその促進因子に関する実験的研究
Project/Area Number |
11671718
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health |
Principal Investigator |
吉田 雅文 産業医科大学, 医学部, 助教授 (00182783)
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Keywords | 音響性聴覚障害 / 外有毛細胞 / グルココルチコイド受容体拮抗剤 / 電位依存性運動能 / 電気刺激誘発耳音響放射 / 低周波音負荷 |
Research Abstract |
モルモットを用いた動物実験で、音響による不可逆性聴覚障害(NI-PTS)の発生機序について検討を行ってきた本研究の最終年度にあたる本年には、過去2年間に行ってきた実験を更に追加するとともに、それらのまとめを行い以下の結論を得た。 (1)4kHz純音を120dB SPL 10分間の曝露により蝸牛神経複合活動電位(CAP)の域値は、曝露直後に約60dBの上昇を示した後回復するが、7日後では30dBの上昇を残した。CM電位歪成や歪成分耳音響放射の出力も、CAP域値と同様な変動を示した。一方、電気刺激誘発耳音響放射(EEOAE)の出力は曝露後のいずれの時期でも、何らの変化も示さなかった。これらの結果より、NI-PTSは可逆性聴覚障害(NI-TTS〕と同様に、外有毛細胞の機械-電気変換機能の障害により生じるものと考えられた。 (2)4kHz純音を120dB SPLで10分間曝露した動物に、グルココルチコイド・レセプター拮抗剤であるRU38436を曝露当日および1,3日後に投与した。曝露後7日目に蝸牛神経複合活動電位(CAP)の閾値を測定し、コントロールである生食投与群と比較検討した。その結果、5〜8kHzのCAP閾値がコントロール群に較べ有意に上昇していた。グルココルチコイドの働きを減弱することにより、音響曝露後の回復過程が阻害されると考えられ、ストレス等により音響受傷性が亢進することが示唆された。 (3)8kHzセバンドノイズ103dB SPL 30分間曝露前後において、12kHzの交流電気刺激により発生するEEOAEに低周波音を同時に負荷することにより生じる出力変調が、どのように変化するかを観察した。その結果、強大音曝露のEEOAE出力自体に及ぼす影響は軽微であったが、低周波負荷による出力変調の大きさは曝露後に約50%程度に減少した。強大音曝露により機械-電気変換機能が低下し、変調の大きさが減少したものと考えられた。
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[Publications] 藤村和伸 他: "サリチル酸塩の電気刺激誘発耳音響放射に及ぼす影響について"日本耳鼻咽喉科学会会報. 102・10. 1184-1189 (1999)
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[Publications] 吉田雅文 他: "能動的基底板振動 -外有毛細胞の働き-"Otology Japan. 10・1. 48-55 (2000)
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[Publications] K Fujimura, M Yoshida: "Eefects of Salicylate and Short-term Sound Exposure on Extracochlear Electrically-evoked Otoacoustic Emissions"Acta Otolaryngolog. 121・6. 781-786 (2001)