2000 Fiscal Year Annual Research Report
眼内炎症・眼内新生血管における性差とその病態機序・治療におけるエストロゲンの役割
Project/Area Number |
11671735
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
万代 道子 京都大学, 医学研究科, 助手 (80263086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柏井 聡 京都大学, 医学研究科, 助教授 (50194717)
高木 均 京都大学, 医学研究科, 講師 (70283596)
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Keywords | 17 beta estradiol / VEGF / VEGFR2 / 血管内皮細胞 / 脈絡膜血管新生(CNV) / 未熟児網膜症 |
Research Abstract |
今年度は昨年度に続き、網膜血管内皮細胞の培養系におけるエストロゲンの作用の検討と、新たに未熟児網膜症モデルマウスにおけるエストロゲンの効果の検討、さらに、Idiopathic choroidal neovascularization(CNV)やmyopic CNVは50歳以下の女性に優位なことからラットのCNV形成の過程におけるエストロゲンの影響と性差についての検討を行った。通常酸素濃度では網膜血管内皮細胞においてエストロゲンがVEGFR2及びVEGFの発現を増加させ、細胞増殖を促進することを前回報告した.一方で、エストロゲンは病理的な虚血状態に対して保護的な効果を持つことが知られていることから、培養系の実験では、血管内皮細胞を用いて低酸素により誘導されるVEGFの発現に対するエストロゲンの効果とその機序を検討した。低酸素刺激により増加したVEGF mRNAの発現はエストロゲンにより9、24時間後に有意に抑制された。この抑制効果は10^<-9>〜10^<-7>Mの間で濃度依存性に認められ、タモキシフェンにより拮抗された。またgel shift assayにて、エストロゲンはHIFのVEGFのプロモーター部への結合を抑制するとともにHIF-1 mRNAの発現も濃度依存性(10^<-9>〜10^<-7>M)に抑制していた。エストロゲンは、エストロゲンレセプターを介して低酸素によるVEGFの誘導を遺伝子レベルで抑制したが、抑制経路の1つとしてHIFによるVEGFの誘導を抑制すると考えられた。このエストロゲンの通常酸素濃度と低酸素濃度下での働きの違いから、未熟児網膜症モデルマウスにおいてエストロゲン投与実験を行ったところ、エストロゲンで12,19日目では無血管野が非投与群に比べて有意に減少し、19日目では新生血管の減少が見られた.また、光凝固による脈絡膜新生血管(CNVモデル)の実験では蛍光眼底造影のスコアは光凝固1、2週間後雌の方で有意に高く、VEGFR-2の発現は光凝固7日後雌及びエストロゲシを投与された雄において増加していた。これらのことからエストロゲンは低酸素下と通常酸素濃度下でVEGFに対して二面性の作用があり、またCNVの性差を説明する可能性をもつことが示唆された。
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