2000 Fiscal Year Annual Research Report
ミクログリアの抗原提示におけるカテプシンEの役割と顔面神経再生メカニズム
Project/Area Number |
11671845
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中西 博 九州大学, 大学院・歯学研究院, 教授 (20155774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 健二 九州大学, 大学院・歯学研究院, 教授 (40091326)
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Keywords | ミクログリア / カテプシンE / カテプシンD / 抗原提示 / ovalbumin / 抗原ペプチド / インバリアント鎖 / カテプシンD欠損マウス |
Research Abstract |
平成11年度の研究成果より、アスパラギン酸プロテアーゼ(カテプシンEならびにカテプシンD)はovalbumin(OVA)の抗原ペプチドへの分解において重要な役割を果たしているが、インバリアント鎖の分解にはほとんど関与していないことが強く示唆された。そこで本年度はミクログリアの外因性抗原提示機能におけるカテプシンEの役割をさらに明らかにすることを目的に(1)精製酵素によるOVA消化断片による抗原提示の検討、(2)カテプシンD欠損マウスより調整した初代培養ミクログリアの抗原提示機能の検討、ならびに(3)カテプシン群阻害剤のインバリアント鎖のプロセシングに及ぼす影響の検討を行った。 (1)精製酵素によるOVA消化断片による抗原提示の検討 ラット脾臓より精製したカテプシンE,カテプシンDならびにカテプシンBを用い、これらのカテプシン群によるOVAの消化(pH5.5,24時間)により抗原ペプチドが生成されるのかどうかを検討した。これらの消化断片をインターフェロン-gで処理した後に4%パラホルムアルデヒドで固定したミクログリアとOVA特異的T細胞ハイブリドーマとの共培養系に加え、培養液中のインターロイキン-2をEIA法により測定した。その結果、カテプシンEあるいはカテプシンDにより消化したOVA断片はインターロイキン-2の産生分泌を有意に増加させたが、カテプシンBにより消化したOVA断片の場合にはインターロイキン-2は対照群との有意な差は認められなかった。この結果より、カテプシンEならびにカテプシンDはOVAから抗原ペプチドを生成できることが明かとなった。 (2)カテプシンD欠損マウスより調整した初代培養ミクログリアの抗原提示機能 生後5日齢のカテプシンD欠損マウスの全脳より初代培養ミクログリアを調整し、OVA特異的T細胞ハイブリドーマとの共培養系にOVAを加えた後、培養液中のインターロイキン-2をEIA法により測定した。その結果、インターロイキン-2量は野生型に比べて若干低い値を示したが、対照群に比べて有意にインターロイキン-2が増大していた。この結果より、カテプシンDはミクログリアにおけるOVAの抗原提示においては必須な酵素ではないことを示すものである。 (3)カテプシン群阻害剤のインバリアント鎖のプロセシングに及ぼす影響 インバリアント鎖のプロセシングに対するカテプシン阻害剤の影響をさらに検討する目的でインバリアント鎖に対する抗体を用いてウエスタンブロット解析を行った。その結果,leupeptin(100uM)やE64d(10uM)で処理したミクログリアではこのようにプロッセシングを受けた分子量10kDaのlip10と呼ばれるペプチドの蓄積が見られ、これ以降の分解が阻害されていることが明かとなった。ところがpepstatinA(10uM)で処理しても全くこのような蓄積は認められなかった。またleupeptin(10uM)で同時に処理してもlip10の蓄積には影響を及ぼさなかった。 以上の結果より、アスパラギン酸プロテアーゼであるカテプシンEならびにカテプシンDはインバリアント鎖の分解にはほとんど関与せず、OVAの抗原ペプチドへの分解に関与していることがが明かとなった。この際、カテプシンDは必須ではなくカテプシンEの方がより重要な役割をはたしていることが強く示唆された。また、顔面神経切断モデルでの検討では活性化ミクログリアの集積部位にはT細胞の浸潤は認められず、軸索再生における抗原提示の役割は明らかにできなかった。
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[Publications] Noda,M. et al.: "AMPA-preferring subtypes of glutamate receptor in rat cerebral microglia."J.Neurosci.. 20. 251-258 (2000)
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[Publications] Nishioku,T. et al.: "Involvement of caspase-3-like and lysosomal proteases in methylmercury-induced apoptosis of primary cultured rat cerebral microglia."Brain Research. 871. 160-164 (2000)
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[Publications] Koike,M. et al.: "Cathepsin D deficiency induces lysosomal storage with ceroid lipofuscin in mouse CNS neurons."J.Neurosci.. 20. 6898-6906 (2000)
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[Publications] Tsukuba,T. et al.: "New functional aspects of cathepsin D and cathepsin E"Mol.Cells. 10. 601-611 (2000)