1999 Fiscal Year Annual Research Report
チロシンキナーゼ阻害剤による唾液腺癌治療に関する基礎的研究
Project/Area Number |
11671869
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
由良 義明 徳島大学, 歯学部・附属病院, 講師 (00136277)
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Keywords | 唾液腺癌 / 酸性線維芽細胞増殖因子 / 増殖因子受容体 / チロシンキナーゼ阻害剤 |
Research Abstract |
唾液腺癌の特徴は口腔扁平上皮癌と比較して放射線による治療効果が得られないこと、転移の頻度が高いことである。原発巣には手術が第一選択であるが、残存した腫瘍細胞や転移に対しては化学療法が必要となる。しかし、現在までに有効な化学療法は確立されておらず、新規の治療剤が望まれている。上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子(FGF)など多くの増殖因子の受容体ではチロシンキナーゼ活性が認められており、その活性化が癌細胞の増殖に重要な役割を果たしている。このような増殖因子と受容体に依存した増殖様式を示す癌の増殖はチロシンキナーゼ阻害剤で影響を受ける。本研究では、マウス顎下腺で存在が報告されている酸性FGF(aFGF)の増殖シグナルが唾液腺癌の増殖に関与する可能性につき検討した。ヒトリコビナントaFGFとウシ脳由来のaFGFは、in vitroにおいてマウス顎下腺癌細胞の増殖を濃度依存的に促進した。ジメチルベンズアントラセン(DMBA)により誘導されるマウス顎下腺発癌の実験系において、DMBAによるイニシエーションを行ったのちに、ウシ脳由来aFGFを10週間にわたって継続投与した結果、顎下腺における前癌性病変とされる管腔・嚢胞様病変ならびに癌の発生頻度が有意に上昇した。免疫組織化学染色を行ったところ、主にマウス顎下腺顆粒管、未分化癌実質でaFGF、FGF受容体が検出された。イムノブロット法とRT-PCR法でもaFGFが検出され癌組織でのaFGFの発現増強がみられた。したがって、マウス顎下腺癌の増殖はaFGFのオートクライン、パラクライン機構にて促進されるものと考えられる。このような唾液腺癌ではチロシンキナーゼ阻害剤が有効な化学療法剤になると思われる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Hitoshi Tsujimoto: "Effect of epidermal growth factor administration on the development of mouse salivary gland carcinomas"Journal of Oral Pathology and Medicine. 28. 30-36 (1999)
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[Publications] 由良義明: "ヘルペスウイルスの細胞外放出に対するサイトカラシンDの促進作用"口腔組織培養学会誌. 8・1. 47-48 (1999)
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[Publications] 佐藤光信: "口腔癌におけるUFT+OK-432+RT同時併用療法"Tumor Dormancy Therapy. 1. 17-22 (1999)
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[Publications] 由良義明: "口腔顔面領域におけるαヘルペスウイルス感染症"日本臨床. 58・4(印刷中). (2000)