Research Abstract |
昨年までに口腔扁平上皮癌細胞株においてサイクリンEの発現が極度に低下している細胞(HSC-2)が存在することがわかった.そこで,サイクリンEのアンチセンスベクターをHSC-2にtransfectionし,colony formation assayによる増殖抑制効果を調べた.その結果,発現の高いHOC313では増殖抑制がみられたが,HSC-2では認められなかった.さらにH1 kinase assayにおいて,HSC-2ではCdk2活性そのものの低下がみられた.サイクリンE/Cdk2はG1/Sの移行に必須だと考えられているが,以上のことからHSC-2ではこの活性を相補する因子があるのか,下流のターゲットがサイクリンE非依存性に活性化している可能性などが考えられる.最近,サイクリンEのホモログであるE2がクローニングされたが,サイクリンE2の発現をみるとHSC-2を含めていずれの細胞でも高度の発現がみられた.ところがHSC-2にこのアンチセンスを導入しても増殖抑制はみられず,E2がEの機能を相補しているという証拠は得られなかった.次に,後者の可能性について,Cdk inhibitorであるp16,p21のアデノウイルスベクターを上記細胞に感染させ,増殖効果,さらにサイクリンEの基質蛋白の発現を調べた.その結果,HSC-2ではp16,p21により増殖抑制され,Rb,p130が低リン酸化されることがわかった.このことから,HSC-2ではサイクリンE低下によるRb pathwayへの影響は関与していないと推論された.最近,サイクリンE/Cdk2のターゲットの候補として,Rbだけでなく,p27,E2F-5,中心体複製,DNA複製因子,chromatin remodeling complexを形成するSWI/SWF family,ヒストン合成に関与するNPATなどの報告がされ,G1/S期で多彩な作用をしている可能性が指摘されている.そこで現在,HSC-2をはじめ口腔癌細胞株においてこれら下流分子の異常が起こっていないかどうか,解析中である.
|