Research Abstract |
平成11年度から増殖制御のkeyとなるG1期制御因子,サイクリンD(D1, D2, D3)及びサイクリンE(E1, E2)を中心に口腔扁平上皮癌細胞株での増殖異常への関与について解析を進めてきた.サイクリンDの発現を調べたところ,3株でD1の高発現,D2の発現低下がみられ,さらにRb, p107が高度にリン酸化されていた.一方,他の4株ではD1の発現は逆に低下し,D2の高発現がみられ,p107の高リン酸化バンドはみられなかった.即ち,D1の発現レベルとRb, p107のリン酸化に相関がみられた.一方,サイクリンEについては,いずれもE2は高度に発現がみられたが,E1の発現はHSC-2において極めて低下していた.そこでE1のアンチセンスベクターを作製し,HSC-2に導入してcolony formation assayによる増殖抑制効果を調べたところ,増殖抑制はみられなかった.HSC-2においてCdk2活性そのものが抑制されているのかをみるため,p16, p21を導入し,増殖抑制効果さらにRbの発現,リン酸化を調べた.その結果,HSC-2においてもp16, p21によって増殖抑制がみられ,Rbは低リン酸化されていた.このことから,HSC-2ではサイクリンAがCdk2活性を担っている可能性が考えられた.最近,S期への進行に必須な中心体やDNAの複製因子,またヒストン合成に関与するNPATなどもサイクリンE/Cdk2の標的となるという報告がされていることから,HSC-2ではサイクリンE非依存性にこれらのの発現異常が起きているものと考えられる.以上から口腔癌細胞の中でもG1/S期の制御因子の発現には相違があり,このことが個々の癌細胞の悪性度の差に反映している可能性があると結論された.以上の要旨を第46回日本口腔外科学会総会(鹿児島)において発表し,また現在論文作成中である.
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