Research Abstract |
【目的】平成11年度の研究において,長時間頭頸部悪性腫瘍手術では,凝固亢進を示すprothrombin fragment 1+2(F1+2)の推移に手術侵襲を反映するインターロイキン6(IL-6)が強い相関性を示すことが明らかであったが,軟組織損傷に伴って増加すると予想されたtissue factor(TF),tissue factor pathway inhibitor(TFPI),トロンボモジュリン(TM)の変動は明らかでなく,組織,血管損傷の関与は大きくないことが判明した。そこで平成12年度は,さらに組織型プラスミノゲンアクチベーター(tPA)とプラスミンα2プラスミンインヒビター複合体(PAP)を測定して,凝固活性の亢進の線溶活性への影響について検討した。 【方法】対象は顕微鏡下遊離皮弁移植による即時再建術を含む悪性腫瘍手術とし,F1+2,IL-6,TM,TF,TFPI,PAP,tPAについて,麻酔開始時,頸部郭清術終了時,顕微鏡下手術終了時,麻酔終了時,術後1,2日(1POD,2POD)に測定した。 【結果ならびに考察】F1+2とIL-6は手術経過に伴って増加し,麻酔終了時に最大となり,術後低下した。tPAの推移も同様であったが,TM,TF,TFPI,PAPは明らかな変動を示さなかった。この結果は,凝固亢進によるフィブリン産生に応じて,血管内皮細胞からtPAが放出されるが,プラスミノーゲン活性化インヒビタ-1(PAI-1)による抗線溶活性の亢進によってPAPの上昇が抑制されたものと考えられた,すなわち,長時間手術での凝固亢進の線溶活性におよぼす影響は,プラスミン活性を大きく亢進させるほど大きくはないが,tPA産生は凝固亢進状態に応じて変動していることが明らかであった。また,手術の血管侵襲は,血管内皮細胞に明らかな影響を及ぼすが,TMを遊離するほど大きいものではないと考えられた。
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