Research Abstract |
ユリ科Galtonia candicans鱗茎より,HL-60細胞に対して強カな増殖抑制活性を有する新規ステロイド配糖体(1:galtonioside Aと命名)か得られた.Galtonioside Aのアグリコンの基本骨格はコレスタンであり,酸素官能基をC-1,3,11,16,19,22,23位に有し、高度に酸化された構造を持つ.A環とB環の結合様式は植物由来のコレスタンでは稀なシス(5β)結合である.C-1,11,19位は水酸基で,16位と23位の間では6員環エポキシ環を形成しており,さらに,3位に3,4,5-trimethoxybenzoic acidがエステル結合し,22位にはアラビノースとグルコースより構成される2糖を有する.Galtonioside Aは天然有機化合物として非常に新規性の高い構造である. Galtonioside Aの生理活性に関しては,1)HL-60細胞に対して,現在臨床で抗癌剤として使用されているエトポシドやメトトレキサートとほぼ同程度の増殖抑制活性を有していること,2)3位の芳香族酸の欠落により増殖抑制活性が著しく減弱したことから,強カな活性の発現に芳香族酸が必須であることが明らかとなったこと,3)ヒト培養細胞パネルを用いた抗癌剤スクリーニングを行なった結果,differential cytotoxicityを示し,乳癌、脳腫瘍,小細胞性肺癌に対して強い選択性が認められたこと,4)さらにその Finger Printは既存の抗がん剤と類似性を持たず(COMPARE プログラムにおける相関係数は0.5以下),新しい作用機序を有する腫瘍細胞増殖抑制活性物質と期待されること,5)コレスタン型ステロイドが配糖体として強カな腫瘍細胞増殖抑制活性を示すものは他にあまり例がないこと,など興味深い知見が得られた.今後,galtonioside A のin vivoでの活性評価,本植物に含まれる腫瘍細胞増殖抑制活性成分のさらなる検索を行う一方,galtonioside Aとは別に糖鎖構造の異なるステロイド配糖体を合成し,糖鎖構造と活性の関係を明らかにして,新規作用機序を有する抗癌剤の創製へと繋げていく予定である.
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