1999 Fiscal Year Annual Research Report
多彩な生物活性を有する肝細胞増殖因子のホメオスタシスに基づいた臓器特異的送達
Project/Area Number |
11672138
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 将夫 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (30251440)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 敦史 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (50302774)
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Keywords | 肝細胞増殖因子 / サイトカイン / 体内動態 / ドラッグデリバリーシステム / ホメオスタシス / クリアランス |
Research Abstract |
肝細胞増殖因子(HGF)は、各種上皮細胞に対して、極めて顕著な増殖促進作用を有することから、肝障害、腎障害などの障害臓器の修復を目的とした、医薬品としての開発が期待されている。しかしながら、そのレセプターの発現が多臓器にわたることから、生物活性が予期しない臓器においても発揮される危険性がある。そこで本年度はHGFの体内動態機構を、特に各臓器における抽出効率(一回の通過でどの程度が臓器細胞に結合し取り込まれるか)に焦点をあて、検討を行った。正常ラットにHGFを定速静注し、定常状態下での循環血、肝静脈、腎静脈左心房中濃度をELISAにて測定したところ、肝臓、腎、肺の抽出率はそれぞれ50-60%、<10%、<10%であることが明かとなった。各種障害モデルラットを用いた解析からも肝抽出率はせいぜい60%程度であることが示唆された。この結果は、HGFを循環血中に投与した場合、いずれの臓器においても半分ないしそれ以上が臓器通過後、再度循環血中に帰還することを意味する。また、内因性のHGFは、不活性型(一本鎖)として生合成され、障害臓器において活性化され二本鎖の活性型HGFとなることから、臓器内毛細血管スペースを一つのコンパートメントと考えた場合には、活性化されたHGFの少なくとも半分以上は循環血中に放出されることを示唆する。一般に内因性HGFは障害臓器特異的に修復効果を発揮すると考えられ、従って何らかのメカニズムによって活性化を受けたHGFがそのまま障害臓器に留まる機構が働いている可能性がある。来年度はこのメカニズムの解析を行いたいと考えている。活性型HGFを腎障害マウスに投与すると腎臓ばかりでなく肝臓でも増殖促進が見られた一方、不活性型を投与すると障害臓器特異性が観察されたことから、来年度はこのアプローチをDDSに応用し、障害臓器特異性を持たせた製剤設計を行いたいと考えている。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 前田和哉: "阻害剤を用いた細胞内輸送機構の解明と制御"生体の科学. 50・6. 539-547 (1999)
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[Publications] M. Kato: "Efficient extraction by the liver govems overall elimination of hepatocyte growth factor in rats"J. Pharmacol. Exp. Ther. 290・1. 373-379 (1999)
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[Publications] 加藤将夫: "今日のDDS 薬物送達システム"医薬ジャーナル社・高橋俊雄、橋田 充編集. 443 (1999)