2000 Fiscal Year Annual Research Report
常染色体劣性若年性パーキンソニズムの原因遺伝子パーキンの発現とその生理機構
Project/Area Number |
11672199
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
堀 隆光 摂南大学, 薬学部, 講師 (00199522)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 信孝 順天堂大学, 医学部, 講師 (80218510)
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Keywords | パーキン / パーキンソン病 / パーキンソニズム / 遺伝子産物 / 神経細胞 / 分化 / 培養細胞 / イムノブロッティング |
Research Abstract |
パーキンソン病は中脳黒質ドーパミン性神経細胞の変性を主病変とする疾患である。パーキンソン病のうち約5%は遺伝的に発症することが知られている。近年、これらの原因遺伝子として複数の遺伝子が発見された。その一つが、常染色体劣性若年性パーキンソニズムの原因遺伝子として同定されたパーキンである。パーキンタンパクはN末端側にユビキチン様ドメインを持ち、C末端側にはリングフィンガードメインを持っている。我々は昨年までに、ラットの発生・発達段階における各組織でのパーキンタンパクの発現の解析を行い、その結果、大脳、中脳、小脳、海馬、線状体、視床下部、橋・延髄のすべての分画と脊髄、心臓にパーキンタンパクが特異的に発現していることを見出した。また、胎児期から成熟期に至るにつれ、脳の7画分においてのみその発現が顕著に増加していることが判明した。一方、昨年、パーキンタンパクがユビキチンリガーゼとしての機能を持つことが報告された。この報告より、パーキンはユビキチン・プロテアソーム系に関与し何らかの標的タンパクの分解を制御している可能性があるが、詳細については依然として不明である。本年度は以上の事実をふまえ、パーキンの生理機構をさらに詳細に検討するため、神経系の培養細胞を用いた実験を行った。副腎髄質クロマフィン細胞であるPC-12細胞は、神経成長因子(NGF)で刺激することにより突起を伸長し神経様細胞に分化することが知られている。上記の実験でパーキンタンパクが脳に特異的に存在したことから、PC-12細胞を神経様細胞に分化させることによりパーキンが発現するようになるのではないかと考え、細胞分化とパーキンタンパク発現との関係を検討した。その結果、NGF刺激によるPC-12細胞の神経様細胞へ分化の程度とパラレルにパーキンが発現してくることが証明された。パーキンの発現は神経突起の伸長と同じく刺激3日〜4日後にほぼ最大となった。パーキンタンパクは神経細胞への分化と同時に強く発現するようになることから、神経細胞への分化過程あるいは神経細胞としての機能に重要な機能を持っていることが示唆された。今後は、パーキンのユビキチンリガーゼ活性が、これらの生理機能にどのように関わっているか検討する。
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