1999 Fiscal Year Annual Research Report
β-カテニンの変異による癌化の分子機構-細胞運動と遺伝子発現の変化に関する研究
Project/Area Number |
11672200
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
芝本 さゆみ 摂南大学, 薬学部, 助手 (80178920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 健治 摂南大学, 薬学部, 研究員 (30248067)
伊藤 文昭 摂南大学, 薬学部, 教授 (80111764)
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Keywords | β-カテニン / Wnt / ガン / 細胞接着 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
β-カテニンは細胞間接着分子カドヘリンの接着能を制御する分子であり、かつWntシグナルカスケードの鍵となる分子でもある。通常、カドヘリンと結合していないβ-カテニンは速やかに分解されるため細胞質にはほとんど存在しないが、Wntのシグナルが細胞内に伝わると、細胞質のβ-カテニンが安定化され発現量が増大する。その結果、細胞質β-カテニンは核へ移行し転写因子として標的遺伝子の発現を誘導する。様々な上皮性ガンにおいてβ-カテニン量の増加が報告されており、それは遺伝子変異の結果β-カテニンの安定性を決定する特定のアミノ酸に変異が生じるためと考えられている。以上のことから、我々は、正常ではWntシグナルを必要としない細胞において細胞質β-カテニンレベルが上昇することによって、発ガンに関わる遺伝子発現が誘導されると考えた。そこで、我々は培養細胞系をモデルとして細胞質にβ-カテニンが存在する細胞において、細胞間接着性などの細胞行動及び遺伝子発現変化について解析を行うことを本研究の目的とした。変異β-カテニンを発現させることにより細胞質β-カテニンのタンパク質レベルを上昇させ、その細胞の行動の変化と発現が誘導される遺伝子種を解析するため、本年度は、変異β-カテニン発現細胞株の樹立を試みた。まず、β-カテニンのN末の一部に種々の変異を導入したβ-カテニンcDNAを作製し、発現ベクターに組み込んだ。その遺伝子を導入する細胞としてマウスとヒトの細胞株を2種ずつ選択し、現在発現株のスクリーニングを行っている。また、変異β-カテニン発現細胞の行動の変化とWntが細胞の行動に与える影響を比較するために、まずWntの影響を調べた結果、細胞形態が顕著に変化していた。その時、細胞骨格系の分子群の細胞内局在パターンが大きく変化しており、アクチンや微小管の再編成が行われていることが示唆された。
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