2001 Fiscal Year Annual Research Report
β-カテニンの変異による癌化の分子機構―細胞運動と遺伝子発現の変化に関する研究
Project/Area Number |
11672200
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Research Institution | SETSUNAN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
竹内 健治 摂南大学, 薬学部, 助手 (30248067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 文昭 摂南大学, 薬学部, 教授 (80111764)
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Keywords | β-カテニン / Wnt / 癌 / バルプロ酸 |
Research Abstract |
β-カテニンは細胞間接着分子カドヘリンの接着能を制御する分子であり、かつWntシグナルを伝達する分子でもある。通常、カドヘリンと結合していないβ-カテニンはユビキチン/プロテアソーム系により分解されるため細胞質にはほとんど存在しないが、Wntシグナルが伝わると細胞質のβ-カテニンが安定化され、細胞質および核内の発現量が増加する。種々の癌において、細胞質や核内におけるβ-カテニン量がWntのシグナルに依存せず増加している。これは主としてβ-カテニン遺伝子のエクソン3領域の変異が原因であり、これら変異の中にはエクソン3のセリンがミスセンス変異を起こしているケースが多く見つかった。エクソン3中のセリン残基がGSK-3によりリン酸化されることがプロテアソームによる分解の目印となっていると考えられているので、これらのセリン残基が変異したβ-カテニンcDNAを用いて、細胞内のβ-カテニン量を増加させることを計画した。作製した変異β-カテニンcDNAを発現ベクターに組み込み、ヒト細胞株に導入してβ-カテニン発現細胞株の樹立を試みたが、安定発現株を得ることはできなかった。 抗てんかん薬として用いられているValproate(VPA)は、ヒトの神経芽細胞腫においてGSK-3活性を阻害して核および細胞質中のβ-カテニン量を上昇させることが報告されている。そこで、我々は、VPA処理をすることによりβ-カテニン量を細胞内に増加させることができるか調べた。1日1回、300mg/kgのVPAを数日間マウスに投与後、脳を大脳皮質など7画分に分けた。その各画分の細胞質中のβ-カテニン量をWestern blotting法により調べたが、いずれの画分においてもβ-カテニン量の上昇は見られなかった。
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