1999 Fiscal Year Annual Research Report
医薬品開発を目的とした分子の波動関数の高度利用に関する研究
Project/Area Number |
11672219
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
市川 紘 星薬科大学, 薬学部, 教授 (30061279)
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Keywords | 構造活性相関 / ニューラルネットワーク / 分子軌道法 / 反応性指数 / アクティブポイント |
Research Abstract |
薬物の生理活性の発現は、その化合物の物理的(疎水性)の輸送能、化学的特性(立体性、および電子効果)によりレセプタとの結合が最適化されたとき最も有効となる。報告者の研究目的は、分子軌道法を用いた創薬の方法の確立である。 レセプタと薬物の結合能の問題では、両者とも固定された構造を持つとは限らないため、薬物分子あるいはレセプタの固有な量として立体効果の発現はできない。この問題を検討した結果、(1)薬物の全ての原子を考慮するのではなくアクティブポイントの概念を導入する。アクティブポイントは官能基を含む薬物の作用を決定する原子(複数)を指す。(2)原子の概念を用いないで、原子に対応するアクティブポイントの物質は量子化学計算から得られる反応性指数(電荷、求電子反応性指数、求核性反応指数等)に替える。(3)立体構造はアクティブポイント間の距離として発現する。(4)分子の構造変化およびレセプタの構造変化は、許容されたエネルギー範囲内でのアクティブポイント間距離の許容変化マトリクスとして発現する。以上の方法で対処できることがわかった。この扱い方の利点は分子の原子構成や見かけの立体構造にとらわれず、考慮する原子数もアクティブポイントに限られることである。欠点は、薬物分子-レセプタの相互作用の構造が解析し難いことである。 また、輸送の問題は、水-オクタノールの分配係数を分子軌道法により得られる指数と実験値との関係を階層型ニューラルネットワークで認識させたところ、原子の数、電荷、双極子能率で表現できることが明らかとなった。以上のことより、分子軌道法を用いた創薬の方法の基礎がおおむね固まった。
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[Publications] 市川 紘: "分子の全エネルギーの原子と原子間への厳密な分割法"International Journal of Quantam Chemistry. 71・1. 35-46 (1999)
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[Publications] 市川 紘: "ポリエンにおけるπエネルギー加成性の理由"Bulletin of the Chemical Society of Japan. 72・5. 955-961 (1999)
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[Publications] 市川 紘: "πエネルギーの物理的意味とエネルギー加成性の解釈"Bulletin of the Chemical Society of Japan. 72・8. 1737-1740 (1999)