2000 Fiscal Year Annual Research Report
医薬品開発を目的とした波動関数の高度利用に関する研究
Project/Area Number |
11672219
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Research Institution | HOSHI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
市川 紘 星薬科大学, 薬学部, 教授 (30061279)
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Keywords | レセプタ / 相互作用因子 / 分子軌道法 / 福井関数 / 電荷 / 構造変化 |
Research Abstract |
薬物の生理活性発現はレセプタと化合物の結合による.その化合物の物理的(疎水性)の輸送能,化学的特性(立体性,および電子効果)によりレセプタとの結合が最適化されたとき最も有効となると考えられる.報告者の研究目的は,分子軌道法を用いた創薬の方法の確立である. 輸送の問題は電荷と電荷間の距離で表現できることがわかった(11年度報告済).我々は化合物を,それを構成する原子を通して理解するが,レセプタは原子を識別するのではなく,分子が与える何らかのレセプタとの相互作用の因子を認識する.創薬のためにはレセプタの要請を満たすそれらの因子を見いだす必要がある.レセプタと化合物の相互作用を原理的に明らかにするため,原子と原子の相互作用を原子軌道レベルで詳細に検討した結果,新しい発見があった.たとえば2個水素原子の原子間距離を短くし2個の原子核を融合させるとき,2個の1s原子軌道が相互作用し,融合核では1sと2p_σ原子軌道が生成する(この相関は,原子軌道相関図とよばれる).ここで,2p_σ原子軌道の生成は,位相の異なる2個の1s原子軌道の相互作用からは説明できず,何に由来するかが問題であった.報告者は,原子軌道が相互作用するとき,中間に高位量子数の軌道が生成すると仮定することで合理的に説明できることを発見した.この考え方を適用することで,有機分子の構造と化学反応の方向性が予測できることを示した.この結果は,相互作用時における薬物分子の構造変化の予測および相互作用の方向を予測する基本的な考え方となるものである. さらに,原子を意識せずに分子の特性を表す指数として,電荷及び電荷間の距離のほか原子に対する(局所)福井関数,ハードネス指数,ソフトネス指数が有効であることがわかった.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 市川紘: "In-Bond Orbitals : A Comprehensive Graphical Expression of Orbital Interaction"Bulletin of the Chemical Society of Japan(日本化学会欧文誌). 73・9. 2001-2008 (2000)
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[Publications] 金子主税: "有機分子の構造(標準形からの骨格と軌道の変形)を予測する理論:Norborneneおよびその7-Ion(Cation,Anion),Ethyl Cation及びEthyl Anionを例として"薬学雑誌(日本薬学会機関誌). 120・10. 969-985 (2000)