Research Abstract |
看護職は臨床の場において,専門能力を発揮し,日々の仕事をしている。こうした能力は,卒後臨床に入ってから,多くの経験と時間,研修・指導を得て,得られる能力である。このような専門能力をもった看護職が退職してしまうということは,蓄積された能力,投入された資源を失うという意味から,当該病院・病棟として,きわめて大きな損失である。こうした専門性育成と退職による損失を経済的に評価しようという試みが,本研究の目的である。評価のための枠組みとして,(1)リクルート諸活動,(2)新採用に伴う活動,(3)オリエンテーション・研修,(4)新人の生産性減少に伴う支援量,(5)退職に伴う活動,(6)欠員期間の支援量の6つのカテゴリーを設定した。各カテゴリーには更に細目を設け,それぞれに投入された人員,時間,経費を調査し,これらを費用に換算し,その合計額を看護職が退職した場合に,それを補うために1年間に必要となる総費用とした。対象病院は国立の総合病院の3施設,調査対象期間は平成10年度の1年間,調査票は看護部長並びに看護婦長によって記入された。看護部長記入の調査票は3病院とも回収可能であり,看護婦長用の調査票回収率は,各病院それぞれ,85.7%(14部署中12),100.0%(16部署中16),93.3%(30部署中28)であった。現在,得られたデータの解析を行っている。
|