Research Abstract |
精神病患者を地域でケアしている家族ケア提供者の負担,負担に影響を与える諸因子および負担に対する対処方法を明らかにして,精神病患者の家族ケア提供者の負担-対処モデルの構築を目的として,精神病患者をケアする成人した家族成員を対象にインタビュー調査を実施した。対象は千葉県A市及び東京都B区在住の43名で,平均年齢61.2(±9.8)歳,平均ケア歴12(±6.8)年であった。母親の占める割合は60.5%,父親20.9%,同胞14%,配偶者4.7%,患者との同居率は81.4%,家族会所属率60.5%,年収250万円以下の家族が11.6%であった。患者の平均年齢は38.2(±12.5)歳で,平均入院回数は2.1(±2.1)回,男性の割合は61%であった。 データ収集は,インタビューガイドに基づいた公式インタビューの録音,非公式のインタビュー記録,家族会で得られた観察情報の記録をとおして行った。データ分析には仮説生成的な技法を用い,以下の結果を得た。 1)家族ケア提供者の負担は共鳴的な痛みと予定外のケア役割への負担感という中心テーマが析出され,負担の結果は精神的健康の低下であった。 2)家族ケア提供者の対処は,主として患者の心理社会的安寧を確保することに向けられ,医療継続への関与,ケア知識の学習,患者の能力の活用,患者の社会性回復と社会的自立への援助,ケア提供者自身の健康維持に分類できた。対処の結果には,ケアヘの自信,互恵関係の維持,社会への再参入が含まれた。 3)家族ケア提供者の負担は,患者の状態,ケアの内容と量,患者及びケア提供者の年齢と性別,患者-ケア提供者の関係及び親密度,ケアの知識と技術,支援の質と量,精神保健福祉資源等の影響を受けると考えられた。また対処と対処の結果は負担を媒介し,負担の結果に影響を与えると考えられた。 今回の研究の特徴は,精神病患者の家族ケア提供者の負担と対処の関係を体系的に示し,かつ患者の自立を促す家族の対処方法を明らかにした点にある。
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