2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11680001
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 毅彦 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (90237941)
|
Keywords | 技能 / 伝統技術 / 冶金学 |
Research Abstract |
本研究においては、計画した3つのテーマのうち、とりわけ第二の課題である日本の伝統技術を近代科学の観点から解釈し分析した事例を検討した。取り上げた事例は、冶金学者の俵國一による日本刀の研究である。古来の刀鍛冶による製刀法において、刀剣模様の特徴を表す「匂い」「沸え」といった極めて感覚的な概念が重要視されたが、俵はそれらに冶金学からの解釈を試みている。現在俵の史料は、安来の和鋼博物館に所蔵されており、そこに当時の実験ノートなどが収められている。俵の史料とともに保管されているのが、俵の後に日本刀の製法を深く分析した岩崎航介という人物の史料である。彼は歴史学と冶金学を修める傍ら、各地の刀鍛冶を訪問見学して製刀法を実体験することを通じて、その科学的分析ならびに資料的考証を試み、その見聞を元に卒業論文「製刀法について」を執筆している。件の「匂い」「沸え」といった特徴ある刀剣模様の由来は焼刃土の盛り方に依存してることが、そこでは明快に記されている。金物の町三条で生まれ育ち、ゾリンゲンの輸入品に対抗するために研究に着手した岩崎は、伝統的な製刀法を参考にして新しい刃物の製法を編みだそうとしたが、結局は安全剃刀などを作り出したりするだけで、大きな成果を上げるまでには至らなかったようである。 また3つのテーマに共通する技能概念の科学的分析や表示方法といった問題については、文化人類学者や社会学者などによる研究も生み出されており、それらの研究との関連性も指摘するような形で論文を執筆する予定である。
|
-
[Publications] 橋本毅彦: ""Introducing a French Technological System : The Origin and Early History of the Yokosuka Dockyard,""East Asian Science, Technology, and Medicine. no.16. 53-72 (1999)
-
[Publications] 橋本毅彦 Peter Galison and Alex Roland eds: ""The Wind Tunnel and the Emergence of Aeronautical Research in Britain,""Atmospheric Flight in the Twentieth Century (London : Kluwer Academic Publishers). 223-239 (2000)