1999 Fiscal Year Annual Research Report
地域住民の健康状態からみた地域間格差と近代化 -戦前の軍統計を用いた日欧比較-
Project/Area Number |
11680070
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
加賀美 雅弘 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (60185709)
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Keywords | 衛生・医療データ / 地域間格差 / 近代化 / 日欧比較 |
Research Abstract |
日本国内におけるさまざまな疾病・障害の地域差を描出し、これを検討するという研究課題のために、まず、日本の大正期から昭和初期にかけての時期の衛生・医療データを、主に厚生省において収集した。とくに、国立社会保障・人口問題研究所では、健康データについての体系的な情報を得ることができた。また、当時の医療データの信頼性についての吟味を、国立公衆衛生院疫学部において実施した。その結果、日本における衛生・医療データが地域別に捉えるには、信頼度がさして高くないこと、データの基準が調査年ごとに頻繁に変化しているために、経年変化を捉えることがきわめて難しいことが明らかになった。そこで、抽出可能なデータを著しく限定せざるをえなくなった。今年度は、信頼度の高いデータを吟味・確認し、実際の分析に利用できるデータを選択することに終始した。データのコンピュータへの入力も開始しており、来年度に、データの本格的な解析を予定している。 なお、本研究は、先行のヨーロッパにおける社会経済データの分析結果と比較することを最終的な課題としている。そのために、日本の特質や時代背景と照らし合わせながらヨーロッパの衛生・医療データを新たに入手する必要がある。そこで、冬期に約三週間の外国出張を行い、オーストリア・ウィーンに所在する国立公文書館、中央統計局において帝国の地域間格差を説明するための社会経済指標となりうる統計の収集、ヨーロッパ連合(EU)におけるデータ所在の確認のために、ベルギー・ブリュッセル、フランス・ストラスブールのEU機関での資料収集、さらにスイス・ジュネーブのユネスコ本部での資料収集も行った。長らく共同研究を進めてきたドイツ・ハイデルベルク大学地理学研究室のモイスブルガー教授らとの討論も、有意義であった。
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