1999 Fiscal Year Annual Research Report
都市キャニオンにおける放射収支成分と気温・湿度の改変に及ぼす街路樹の影響
Project/Area Number |
11680090
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小林 守 筑波大学, 地球科学系, 講師 (10153644)
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Keywords | 都市キャニオン / 街路樹 / 都市面構造 / 遮蔽効果 / 葉面蒸散 / 熱画像 / 都市気候 |
Research Abstract |
都市(街路)キャニオンにおける放射・熱の振舞いは,最も基本的なキャニオン構成要素として両壁面と道路面を考慮することで論じられてきた。しかし,近年,都市の熱環境の緩和因子として緑地が注目されている。本研究では,キャニオンの重要な構成要素として街路樹を新たにとりあげ,街路樹が都市地表面の放射収支成分,とくに下向き放射成分に,さらには気温・湿度に及ぼす影響について,詳細な観測と解析に基づき解明することを目的としている。本研究のポイントは,キャニオン構成面の表面温度の面的把握と街路樹の蒸散の正確な算定にあると考えている。今年度は初年度であり,葉面蒸散の基準計器として世界的に定評のあるLI-1600スーパーポロメーター(米国LI-COR社製)を導入し,ほぼ当初の計画どおり,研究を進めた。 1.東京都心・新宿副都心・柏市・下妻市など規模の異なる数都市にて,キャニオン構造と街路樹との関係を実態調査し,多数点の天空(全天)写真を用いてビル壁面と街路樹の遮蔽率を算定した。筆者の以前の調査例も合せて考えると,市街地の遮蔽率の下限値は約10%とほぼ一定で,上限値は小都市の約30〜40%,中都市の約40〜50%,大都市の約75%と都市規模により変動する。しかし,街路樹の遮蔽率は約0〜20%の範囲内にあり,都市規模による差異は小さいことが判った。2.秋・冬季の計14日間,サーモトレーサーによる表面温度の面的測定,気温・湿度・放射成分などの詳細な気象観測,ポロメーターによる葉面蒸散測定を都市キャニオン(東西街路)と公園で行った。ヤマモモなどの街路樹に使われる常緑広葉樹を主に測定した。蒸散は,樹種・天候・葉面方位・日向日陰・時刻などにより変化し,光量子量・温度に最も影響され,晴天・正午頃には最大4μg/cm^2・Sもあることなどが判った。葉温は常にビル壁温より低温で,下向き放射成分を抑制しており,放射・熱・乾湿に対する街路樹の緩和効果が判明するものと期待している。
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