Research Abstract |
本研究は,ゲル材料からなる高齢者に適した高機能オムツ素材開発の指針を得ること目的としている.本年度は,素材となるゲルの調製,および,得られたゲルの吸水特性について検討した,ゲル素材としては,水溶性の高分子であるポリビニルアルコール(PVA)とポリエチレンオキシド(PEO)を選び,それらの水溶液に放射線を照射してゲルを調製した.吸水挙動の測定は,浸せき前後に重量を測定して吸水量を求める重量法が一般的であるが,定量的な議論に適するデータは得にくいので,本研究では,ゲルの形態を細長い円柱状にして,溶液に浸せきしたままゲルの大きさを測定し吸水量を決定する方法を用いた.内径0.2mm程度のガラスキャピラリを型として調製した円柱状のゲルを,尿のモデルである,純水,アルカリ金属塩,尿素などの溶液に浸し,膨潤が平衡となったところで,ゲルの直径を,科学研究費補助金により購入した倒立顕微鏡により測定した.PVAとPEOゲルにおいて,溶質特異的な膨潤挙動が観察された.例えば,PVAゲルでは,2価金属イオンの臭化物では膨潤し,硫酸塩では収縮するなどの興味深い知見を得た.現在,これらの結果について,溶液中の溶質,電解質とゲルとの相互作用や,水分子を通しての相互作用などを考慮しつつ考察を進めている.平成12年度には,ゲルに対する染料や遷移金属塩などの収着量の測定し,ゲル調製条件と膨潤度の関係および膨潤度と物質収着性との対応を定量的に検討する予定である.そして,本年度の結果とあわせてゲル材料の吸水メカニズムの詳細な検討を,ゲルとそれに含まれる「水」との関わりに注意しながら行い,高齢者用オムツに適した素材として,また,新たな高機能生活材料としてのゲル材料利用の可能性を見出したいと考えている.
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