Research Abstract |
加熱調理中のダチョウ肉の物性変化について,牛肉および鶏肉との比較を行った. 市販の南アフリカ産ダチョウ腿肉(M.iliofibularis),アメリカ産牛腿肉(middle gluteal m.)および長野県産鶏胸肉(M.pectoralis superficialis)を3×4×1cmの大きさに切り取り,蒸し器で加熱調理した.その過程における内部温度,加熱損失率,収縮度を測定し,硬さおよび凝集性は山電製レオナー(RE-3305)で計測した.解析は,破断強度解析ソフトおよびテクスチャー解析ソフトで行った. ダチョウ腿肉の加熱損失率は,牛腿肉と同様,内部温度が70℃に達するまで急速に,その後は緩慢に増加した.完全加熱状態でのそれはダチョウ肉,牛肉でそれぞれ38%,42%と類似しており,鶏肉は27%であった.加熱による収縮の仕方は,繊維の方向において,3種の肉とも同様に収縮したが,他方向は肉の種類により異なっていた.ダチョウ腿肉と鶏胸肉は,1方向に収縮すると同時に他方向に膨張したが,牛腿肉は3方向とも同様の割合で収縮した.また,加熱前のダチョウ腿肉は,鶏胸肉と同様の軟らかさであったが,加熱により牛腿肉よりも硬くなった.3種の肉の凝集性はすべて凝固中に増加したが,その後は肉の種類により異なっていた.ダチョウ腿肉では,調理時間を長くしても凝集性の減少はなかった. 以上より,加熱調理中のダチョウ腿肉の物性変化は,収縮が鶏胸肉に類似し,加熱損失率および凝集性が牛腿肉に類似し,硬さが凝固中に急激に増すという特性を示した.また,以前に報告した嗜好調査で,刺身,たたき,マリネなどの完全加熱しない料理法が好まれた理由として,肉の物性が関与していることが示唆された.
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