2000 Fiscal Year Annual Research Report
古代金属糸の材質と製作技法の歴史的変遷に関する材料科学的研究
Project/Area Number |
11680168
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
村上 隆 奈良国立文化財研究所, 飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 主任研究官 (00192774)
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Keywords | 金糸 / 金工品 / 材質 / 製作技法 / 金箔 / 技術史 |
Research Abstract |
古代から製作されてきた金属糸、特に金糸を中心に材質と製作技法の研究を行なってきたが、今年度も新たに出土した資料を調査に加えることができた。長崎県壱岐の双六古墳出土の金糸は、わが国で出土した金糸の中でも朝鮮半島に近い古墳からの出土した事例として注目される。また、7世紀の奈良県明日香村飛鳥池遺跡から金糸の製作時に廃棄されたとみられる遺物が出土し、わが国の7世紀の技術水準を窺う上で貴重な資料である。これらの金糸の材質や形状などの基本はこれまでの古代の金糸に対して行なってきた調査結果とよい整合性を示した。ただし、これらの金糸を製作するための技術に違いがあるかどうかなどの詳細は今後の課題である。古代の金糸は、基本的に10μm程度まで薄く延べた純度の高い金の薄板を細いリボン状に裁断したものをコイル状に巻いて作られたと考えられる。金沢地域に伝承される金箔の伝統的製作技術を調査し、金を薄く延べる技術について考察した。また、金糸の歴史的変遷について調査を進めている。古代において無垢の金属製の金糸は、その後本体のベースを金属以外の素材に変化し、表面だけを金色に装飾するようになる。現代日本は、世界有数の金糸生産国である。現代の金糸は紙をベースに表面に金を薄く蒸着する技術によって製作されており、古代の金糸と様相を大きく異にしている。本研究では、金糸のこのような歴史的変遷をより具体的に解明することもめざしており、そのための基本的知見の蓄積に努めた。今後は、外国の事例も含めることにより、世界的視野のもとで金糸を中心とする金属糸の変遷を探る予定である。
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