Research Abstract |
今回の研究では,1)沖縄島の台地上での「実験貝塚」,2)沖縄島の海岸部での「実験貝塚」,3)貝塚の発掘調査の3つを行った。 1)の実験貝塚は,約1.5リットルで目合い2mmのザルに,食用後の貝殻等を入れて作成したものである.設置場所は,石灰岩二次林内である.数年放置したのち,約7cmの実験貝塚を上から3つの層位に区分し,回収した.その結果,貝塚を形成する貝のサイズ=空隙の存在様式によって,各種のボタンやビーズ等,大きさと形状の異なる「遺物」の動態が異なっていた。これらは,土壌動物による影響が大きかった。このような基質により遺物の堆積に差異が生じていることが明かとなった. 2)の実験貝塚は,海岸部の後部の海岸林内に貝殻を,林縁部にチョウセンサザエの殻を置いたものである.海岸林では,a)食用後のアサリとb)貝殻だけのアサリ,の2つを比較した.これは,食用後のアサリでは,肉汁などが残り,貝類などがその残査を求めて集まるのではないかという従来の説を検証するものである.その結果,a)とb)の間に,貝類を含めて,土壌動物に大きな相違は認められなかった.つまり,貝塚では,肉汁などの要素で陸貝が集まってくるのではなく,別な要因が重要だと考えられた.また,サザエの貝殻は,設置後直ぐにオカヤドカリ類によって持ち去られた。このような貝殻の持ち去りが,貝塚でも生じていると考えられた。 3)の貝塚の発掘は,沖縄諸島の古代相当期のナガラ原東貝塚で行った。この貝塚の土壌サンプル中の貝類遺体をサイズと生息場所によって中・大形の食用の貝類・非食用の小形の海産貝類・大形の陸産貝類・微小な陸産貝類の4つに分け詳細に解析した結果,食用貝類・微小陸産貝類・その他という3つの層位的な変化パターンが認められた。つまり,食後の貝殻投棄と貝塚内への貝類の堆積という2つのファクターのあることが示された。微小陸産貝類の変化は,貝塚内での移動というより,周辺の環境の相違に起因すると考えられた。
|