2001 Fiscal Year Annual Research Report
脱文脈化を利用して知識の定着を促進する自宅学習支援システム開発のための基礎研究
Project/Area Number |
11680215
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Research Institution | SHIZUOKA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
漁田 武雄 静岡大学, 情報学部, 教授 (30116529)
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Keywords | 知識 / 脱文脈化 / エピソード記憶 / 環境的文脈 / 背景色 / 反復 / 自由再生 / 大学生 |
Research Abstract |
研究成果の概要は以下の通りである. (1)場所と課題の複合操作による環境的文脈が自由再生におよぼす効果 4つの実験によって,場所と課題を組み合わせて操作した文脈の効果と,それぞれの要因の効果を調べた.その結果,場所と課題を組み合わせると有意な文脈効果が生じるが,個々の要因のみでは文脈効果が生じないことを見いだした.また,4つの実験結果から,複合的文脈は,偶発的文脈というよりは相互作用的文脈として機能することが示唆される. (2)自由再生における背景色の環境的文脈効果 2つの実験を行った.最初の実験では,項目ごとの背景色が変化する条件下で,2つ目の実験では項目提示を通じて同一の背景色の条件下で,文脈効果を調べた.同時に,文脈要因と直交させて,項目の提示速度を操作した.その結果,項目ごとの背景色が変化する条件下では,背景色の文脈効果が生じること,その効果が提示速度効果とは独立であることを見いだした.また,項目提示を通じて同一の背景色を用いた場合,文脈効果は生じなかった.これらの結果は,背景色文脈が複合的文脈や場所文脈とは異なる性質を持つことを示している. (3)反復における環境的文脈の多様性が自由再生におよぼす効果 4つの実験を行った.いずれにおいても,同一材料を2回反復符号化させ,自由再生成績を比較した.2回の符号化は同文脈あるいは異文脈のもとで行わせた.文脈操作は,場所,符号化課題,社会的要因を組み合わせて操作した.その結果,同文脈反復の方が異文脈反復よりも良い自由再生成績を示すことを見いだした.この結果は,複合的文脈が脱文脈化しないことを,むしろ示しているようである.反復における文脈の多様性と知識形成の過程は,はるかに複雑のようである.
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[Publications] 漁田武雄, 漁田俊子: "自由再生における背景色の文脈効果"日本心理学会第66回大会発表論文集. (印刷中). (2002)
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[Publications] 漁田俊子, 漁田武雄: "異なる文脈下での符号化反復が自由再生におよぼす効果"日本教育心理学会第44回大会発表論文集. (印刷中). (2002)
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[Publications] 漁田武雄, 漁田俊子: "記銘項目の背景色が自由再生におよぼす効果"日本心理学会第65回大会発表論文集. 454 (2001)
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[Publications] 漁田俊子, 漁田武雄: "異なるグローバル文脈下での符号化反復が自由再生におよぼす効果(1)"日本教育心理学会第43回大会発表論文集. 72 (2001)
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[Publications] 漁田武雄, 漁田俊子: "異なるグローバル文脈下での符号化反復が自由再生におよぼす効果(2)"日本教育心理学会第43回大会発表論文集. 73 (2001)
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[Publications] 漁田武雄, 漁田俊子: "焦点要素を符号化するための課題操作にともなう文脈変化が自由再生におよぼす効果"静岡県立大学短期大学部研究紀要. 1・2. 243-253 (2000)
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[Publications] 漁田武雄, 漁田俊子: "場所と課題の複合操作による文脈依存記憶"日本心理学会第64回大会発表論文集. 710 (2000)
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[Publications] 漁田武雄, 漁田俊子: "授業と自宅学習の間で生じる文脈依存記憶"静岡県立大学短期大学部研究紀要. 13・2. 205-211 (1999)
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[Publications] 漁田武雄, 漁田俊子: "授業と休憩の間で生じる文脈変化がエピソード記憶におよぼす効果"心理学研究. 69・6. 478-485 (1999)
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[Publications] 漁田武雄, 漁田俊子: "符号化課題を中心とした文脈依存記憶"日本心理学会第63回大会発表論文集. 616 (1999)
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[Publications] 漁田武雄: "文脈依存記憶 羽生義正(編) 学習心理学パースペクティブ"北大路書房. 6 (1999)