2000 Fiscal Year Annual Research Report
道内社会科副読本におけるアイヌ民族記述とその生成過程について
Project/Area Number |
11680244
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Research Institution | Hokkaido Kyoiku Daigaku (HOKKAIDO UNIVERSITY OF EDUCATION) |
Principal Investigator |
吉田 正生 北海道教育大学, 教育学部・旭川校, 助教授 (20261373)
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Keywords | 社会科副読本 / 正統的学校知 / 物語 / アイヌ民族 / 「開拓」史観 / 教育委員会 / 副読本記述の生成過程 |
Research Abstract |
第I章では,小学校3年生のものに限ってではあるが,道教委が正統的学校知として示したところがどれほど受け入れられているかを,「物語」論を手がかりに記述を括り直し,検討した.その結果,次のことが明らかになった.すなわち,「物語」論によって括り直したときには,道教委が示した正統的学校知を十全に受け入れている市町村は7.52%であり,道教委が示した「物語」はほとんど受け入れられていないということである.アイヌ民族について触れた記述を(3年生レベルでは)もっていないという副読本が36.84%あるところからするなら,「アイヌ民族について小3では教えなくともよい」という判断の方が道教委の指導よりも広く行き渡っていることでもある. 第II章において問題としたのは,「アイヌ=滅亡の民」言説に対抗し得るような言説を,子どもたちが構成するための基礎になり得る知識が副読本にみられるのかということであった.本研究においては,そのような知識として<「開拓」がアイヌ民族の状況をいよいよ窮迫へと追い込んでいったというもの>と<現在もアイヌ民族の言語や文化を継承して民族としての誇りをもって生きていこうとしている人たちがいる>という二つであるという作業仮説を立てた上で,そうした記述の存否そしてまた類似記述の質の検討を行ったのである.その結果,前者に関して言えば,それは未だ道教委によって正統的学校知として認めてられてもおらず,また19市町(14.3%)で教えられているにすぎない,ということが明らかになった. 第III章においては,ある優れた副読本記述が生まれる過程において,行政と運動団体との間で何があったかを明らかにしようとした.その結果、明らかになったのは行政側の担当者の<誠実な姿勢及び学問的成果を大切にしようとする姿勢>と運動団体側の担当者における行政として対応できる限界の認識及び交渉相手に対する信頼感>そして他市町村の副読本の動向、この3つがうまくからみ合って一定のレベル以上の記述が生まれたということであった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 吉田正生: "道内社会科副読本における知の布置状況-アイヌ民族関係記述の場合-"『環太平洋へき地の諸相(III)-地域の教材化とマルチメディアによるへき地教育の革新-』(北海道教育大学僻地教育研究施設研究報告書). 79-106 (1997)
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[Publications] 吉田正生: "アイヌ民族関係記述より見た北海道内の社会科副読本について"東京都立大学法学会雑誌. 第38巻1号. 313-344 (1997)
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[Publications] 吉田正生: "道内社会科副読本におけるアイヌ民族関係記述について"社会系教科教育学研究. 第9号. 79-86 (1997)
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[Publications] 吉田正生: "タウン北海における新社会科副読本の生成過程-アイヌ民族関係記述の場合-"教育社会学研究. 第63集. 99-117 (1998)
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[Publications] 吉田正生: "道内社会科副読本(平成9年)における知の分布-"アイヌ民族記述と「開拓」"に関わって-"社会科教育研究. 第82号. 1-12 (1999)