2001 Fiscal Year Annual Research Report
戦後初期における検定国語教科書検閲の実態および特色に関する調査研究
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11680268
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉田 裕久 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (80108373)
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Keywords | GHQ / CIE / 対日占領政策 / 検閲 / 教科書検閲 / 民主主義 / 教科書検定基準 / 検定教科書 / 中・高等学校国語教科書 |
Research Abstract |
GHQ/CIE(米軍総司令部民間情報教育局)は、対日占領政策の円滑な実施のために、そして戦後日本の民主化のために放送・演劇・映画・新聞・雑誌等とともに、教育・教科書に対しても厳しい検閲を実施した。教科書に対する検閲は、占領直後(昭和20年)の国定教科書から占領終結(昭和26年)の初期検定教科書に至る全期間を通じて実施された。占領政策批判の監視を基盤に置きながら、国語教書の場合、軍国主義・超国家主義排除の検閲というネガティブな性格から国語教科書としての適格性の検閲というポジティブな性格へと次第にシフトしていった。 占領後期における中・高等学校検定国語教科書に対するポジティブな検閲として、「中学校のものは、中等教育の目的を把握し、概して良かった。又生徒の興味が尊重されてことも良い」、「高等学校のものは哲学的内容に傾き過ぎたものがあり、或る本などは全部が哲学的なものばかりであった。広義の文学作品の代表的なものを採りたい」、「ある本は全く古典を蔑視し、明治以降のものばかりをとったものがあったがこれも極端である」、「各学年の能力に応じ広く各時代の代表的作品に触れさせるべきであろう」、「教科書は著者の趣味によって作られてはならない」、「挿絵のあまり良くないものがあった」、「年号を書き表すのに皇紀を使用する場合にはそれがどんな時代にあたっているかを示すか、あるいは皇紀をやめ西暦で示した方がよい」、「脚注には誤りが多い。伝説と事実とをはっきりさせること」など、きわめて具体的な指示がなされている。GHQ/CIEによる厳しい教科書検閲の実態の一端をここに垣間見ることができる。こうしたGHQ/CIEの検閲が、今日の文部省の教科書検定の母体となっていったのである。
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