2000 Fiscal Year Annual Research Report
言語情報の指導効果度と個人適応型コンピュータ・テストの開発:項目応答理論に基づく
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11680280
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
窪田 三喜夫 成城大学, 文芸学部, 助教授 (60259182)
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Keywords | 項目応答理論 / 個人適応型コンピュータ・テスト / 個人能力推定値 / 項目難易度パラメータ / 文法性判断テスト / 項目銀行 |
Research Abstract |
[研究目的]平成12年度は、項目応答理論に基づく個人適応型コンピュータ・テスト(CAT:computerized adaptive test)が日本の英語授業で適用可能かどうかを研究した。このCATには、各個人で問題項目が異なるという特徴がある。 目的(1):CATは、従来型の筆記試験(PPT:paper-and-pencil test)と同様の個人能力推定値を測定するのか。 目的(2):出題数は、PPTと比べCATの方が少ないのか。 目的(3):CATの「被験者は、出題項目のほぼ半数に正答する」という理論的前提は妥当であるのか。 目的(4):実際の英語授業で行った限られたテスト・データを用いたCATは実用可能であるのか。 [実験内容]本実験の前に、予備テストとして、テスト項目が授与交替(dative alternation)の文法性判断テスト(1)を大学1年生群(n=60)を対象に行った。この(1)のテストで得られた項目難易度パラメータに加え、既存の4種類の文法性判断テスト((2)前置詞付き動詞、句動詞、(3)心理動詞、(4)拠格交替(locative alternation)、(5)動詞句、形容詞、現在分詞、関係節、接続詞)の項目難易度パラメータを利用し、79項目の項目銀行(item bank)を作成した。本実験には、予備テストとは別の日本人大学1年生群(n=67)が参加し、問題数が79のPPTを受けた。更に、PPTとCATを比較するために、各被験者のPPTデータを用いて、CATのコンピュータ・シミュレーションを行った。尚、項目応答理論に基づく項目難易度パラメータの推定には、コンピュータ・ソフトRASCAL3.5とBILOG-MG1.0を用いた。本研究では、項目難易度を用いる1-パラメータ・モデル(ラッシュ・モデル)を選んだ。CATの作成・実施と個人能力推定値の測定には、FastTest Pro1.5を用いた。 [結果]79点満点のPPTでは、平均点43.9(SD6.39)、CATでは平均点0.58(SD0.28)であった。相関係数はr=.77で、PPTとCATの相関は非常に高いという結果となった。次に、出題項目数に関して、PPTでは全員79問を受けたが、CATの平均解答数は、43問であった。つまり、PPTとCATの出題項目数は、統計的に差があった(p=.0011)。更に、CATの出題数に対する正答率は、ほぼ半数(54.74%)であった。 [考察]実際の英語授業で得られた限られたデータを基に、項目銀行を作成し、CATを実施することは実用可能である。上記の目的(1)〜(4)すべてが、本研究で実証された。PPTと比べて、CATでは約半分の問題数で同じ個人能力推定値が測定できるため、CATの有用性として、テスト時間が短縮でき、テストの終了直後にテスト結果の提示と指導ができる点が指摘できる。CATは、通常の授業のみならず、学年始めのプレースメント・テスト等での活用も期待できる。
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Research Products
(1 results)