1999 Fiscal Year Annual Research Report
硫化鉱鉱山から排出される強硫酸酸性排水の生成機構の解明
Project/Area Number |
11680523
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
牧 陽之助 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (90048520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝田 智俊 岩手大学, 農学部, 助教授 (10089930)
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Keywords | 硫黄 / 硫化物 / 硫黄同位体比 / 鉱山排水 / 自然酸化 / 硫黄同位体分別 / 黒鉱 |
Research Abstract |
本研究では、北東北地方の硫化物及び硫黄を産出した鉱山について、鉱山排水中の硫酸イオンと母岩硫黄の硫黄同位体比を測定し、無機還元型硫黄の自然酸化過程における硫黄同位体分別を評価した。 鉱山排水は陽イオン交換樹脂を充填したイオンクロマトグラフィーによって陽イオンを除いた後、含まれる硫酸を硫酸バリウムとして回収した。硫酸バリウムを酸化バナジウム熱分解法によって二酸化硫黄とした後、硫黄同位体比を質量分析計で測定した。鉱物試料に含まれる硫化物は過酸化水素水によって、また元素硫黄はParr Bombで酸化分解し、硫酸バリウムに変換した。 調査した鉱山は、鉱体間の硫黄同位体比の変動および硫化物と硫黄の産状によって2群に分けられた。第1群の鉱山では同位体比の変動幅が比較的小さく、いわゆる黒鉱や脈状の硫化物を産出した。9鉱山中7鉱山においては、排水中の溶存硫酸イオンの硫黄同位体比は硫化物のそれよりも0.1から2.9パーミル低い傾向があった。一方、第2群の鉱山では同位体比の変動幅が大きく、黒色塊状硫化鉄鉱および天然硫黄を産出した。4鉱山の排水の溶存硫酸イオンは、母岩硫黄に比べて〜6.3パーミル高い場合もあり、逆に〜4.9パーミル低場合もあった。 以上の結果から、第1群の鉱山(黒鉱、脈状の硫化物を産出)では、硫化物の自然酸化過程で負の硫黄同位体分別作用が働いている事が確認された。一方、第2群の鉱山(黒色塊状硫化鉄鉱、天然硫黄の産出)では、鉱山排水と母岩硫黄との間で同位体比が大きく異なり、酸化過程における硫黄同位体分別作用は確認できなかった。
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