2000 Fiscal Year Annual Research Report
大気降下物中の窒素が森林生態系における養分バランスに対する影響に関する研究
Project/Area Number |
11680533
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
馬場 光久 北里大学, 獣医畜産学部, 講師 (70286368)
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Keywords | 森林生態系 / スギ林 / 酸性降下物 / 窒素飽和 / アンモニウムイオン / 林冠における窒素吸収 / 塩基の蓄積 / リターの分解速度 |
Research Abstract |
森林生態系の酸性降下物に対する反応は窒素の飽和状態によって異なる。試験地のある青森県七戸町における大気由来の窒素の沈着量は窒素飽和が起こる基準値を超えているにもかかわらず、窒素飽和の兆候は認められていない。本研究は、窒素化合物の動態に着目し、スギ林の大気降下物に対する反応に関するモニタリングを中心とした環境動態に関する研究である。 平成12年度の無機態窒素の全沈着量は窒素飽和起こる基準とされる10kg ha^<-1>を下回っていた。しかし、土壌中における物質収支の結果、窒素の形態変化に由来する酸の生成量が酸の全生成量を左右していることが明かとなった。また、生成された酸は土壌に保持されているカルシウムイオンなどの塩基とのイオン交換反応および鉱物の化学的風化により消費されていることが示された。これに対して、平成11年度までの結果からスギの落葉中には多くのカルシウムイオンが含まれ、これがリター層および表層土壌での蓄積に寄与しており、土壌酸性化を抑制していることが示唆された。平成12年度においてリターの分解速度について検討した結果、相対的に分解速度の遅い試験区ではリターに塩基が蓄積しており、分解の速い試験区ではリターよりむしろ土壌のイオン交換基に多く塩基が保持されていた。分解速度の差異が塩基の蓄積場所に影響していることが明かになった。加えて、酸の消費の結果深さ0-10cmの土壌から溶脱した塩基の量より、リター層からの塩基の供給量が上回っていたことから、試験対象としたスギ林地では著しい土壌酸性化は起こりにくいと判断された。
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[Publications] 俣野和彦,馬場光久,村上大亮,杉浦俊弘,小林裕志: "スギ林土壌における酸の生成および緩衝作用の定量的把握"日本土壌肥料学雑誌. 71(6). 794-800 (2000)
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[Publications] M.Baba,Y.Suzuki,H.Sasaki,K.Matano,T.Sugiura,and H.Kobayashi: "Nitrogen retention in Japanese cedar stands in northern Honshu, with high nitrogen deposition."Water, Air, and Soil pollution. (印刷中).
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[Publications] K.Matano,M.Baba,A.Shibuya,Y.Suzuki,T.Sugiura,and H.Kobayashi: "Soil solution chemistry in Japanese cedar stands in northern Honshu, with high nitrogen deposition."Water, Air, and Soil pollution. (印刷中).
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[Publications] 岡崎正規,馬場光久(分担執筆): "酸性雨研究と環境試料分析-環境試料の採取・前処理・分析の実際-"愛智出版(丸川満)佐竹研一 (編). 291 (2000)