1999 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による遅延型染色体異常形成におけるテロメア不安定性の関与
Project/Area Number |
11680552
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
児玉 靖司 長崎大学, 薬学部, 助教授 (00195744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 啓司 長崎大学, 薬学部, 助手 (00196809)
渡邉 正己 長崎大学, 薬学部, 教授 (20111768)
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Keywords | 放射線 / 遅延型染色体異常 / 遺伝子不安定性 / テロメア |
Research Abstract |
放射線被曝後の生存細胞に、遅延性に染色体異常が誘導されることが知られている。この現象は、放射線被曝後に誘起される遺伝的不安定性を反映しており、放射線発がんの重要な鍵を握る過程と考えられる。本研究は、放射線による遅延型染色体異常の形成メカニズムとして、放射線によりテロメア維持機能に一部破綻が生じ、それを起因とするテロメア不安定性がその形成に関与するという仮説について検証を試みるものである。本研究でテロメア維持機構に着目したのは、テロメアの不安定化が、放射線被曝直後の生存には余り影響を与えずに、その後の細胞分裂を介して次第に現れると考えられるからであり、この点で放射線による遅延型染色体異常の形成過程をよく説明できるからである。まず、ヒト正常細胞を用いて、放射線誘発遅延型染色体異常頻度に対する酸素濃度の影響を調べた。細胞分裂に伴うテロメア短縮は、酸素濃度の影響を受け、高酸素濃度では短縮率が大きくなることが知られている。本研究では逆に、低酸素濃度(2%)の影響を調べた。通常20%の酸素分圧を、1/10の2%に低下させることにより、放射線による遅延型染色体異常は、約65%減少することが明らかになった。このことは、放射線被曝後の酸素ストレスが遅延型染色体異常形成に関与していることを示している。さらに、放射線誘発遅延型染色体異常のうち、二動原体染色体の形成過程について、マウス細胞を用いてFISH法により調べた。その結果、大部分の遅延型二動原体染色体は、付随する断片がなく、しかも2本の染色体の結合部分において、FISH法によるテロメアシグナルが検出されないことが分かった。このことは、遅延型二動原体染色体の形成がテロメア不安定性を介している可能性を示唆している。
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Research Products
(1 results)