2000 Fiscal Year Annual Research Report
放射線誘発がんの生成機構解明のための発がん数理モデルに関する研究
Project/Area Number |
11680555
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Research Institution | Oita University of Nursing and Health Sciences |
Principal Investigator |
甲斐 倫明 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (10185697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 正明 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助教授 (40173794)
大瀧 慈 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 教授 (20110463)
丹羽 太貫 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (80093293)
山口 直人 国立がんセンター研究所, がん情報研究部, 部長 (80119031)
水野 正一 東京都老人総合研究所, 情報科学部門, 室長 (00126905)
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Keywords | 放射線誘発がん / 発がん数理モデル / 原爆被爆生存者 / Armitage-Dollモデル / MVKモデル |
Research Abstract |
(1)発がん数理モデルの作成と検証 放射線誘発がんの仕組みとして、従来考えられていたDNAの直接損傷から生じる突然変異を原因とするモデルから、遺伝的不安定性を想定したモデルの検討を行った。 大瀧らは、多段階発がんモデルを発展させ、細胞死と遺伝的不安定が関与しながら、がんに進展するとするモデルを提示した。 甲斐は、2段階モデルを基本として、遺伝的不安定性を考慮しなければ、原爆データや動物データの発がん率をうまく説明できないのかという視点から、遺伝的不安定性モデルとして、単一の放射線被ばくによって長期間にわたってイニシエーションが続くとするモデルを導入し、従来のモデルとの比較を行った。その結果は、遺伝的不安定性を想定したモデルでもよくデータに適合することがわかった。松浦は、広島大学の原爆データを用いて、甲斐と同様の解析を行い、遺伝的不安定性が働く期間が線量に依存する傾向を見出した。 Pierceらは、現在の原爆被爆者データの傾向は、Armitage-Doll modelを拡張したモデルでうまく説明が可能であることを強調したが、乳がんや甲状腺がんといった特定のがんでは必ずしもうまく説明ができないことから、年齢ごとに感受性関数を導入し、過剰相対リスクの定式化を行った。しかし、Pierce modelは発がん機構にせまる役目を果たせないのではないかという問題点や原爆データの傾向を別に解釈することも可能であることなどが問題となった。 (2)国際ワークショップの開催 米国から、ORNLのFry博士とFred Hutchinson Cancer Research CenterのMoolgavkar博士とLuebeck博士を招聘し、国際ワークショップを開催した。この会議では、発がん数理モデルに関する研究成果を報告し、議論を行った。
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