1999 Fiscal Year Annual Research Report
下水処理水中有機物の構成成分とその起源に関する研究
Project/Area Number |
11680566
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 弘泰 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (90251347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
味埜 俊 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (60166098)
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Keywords | 下水処理水 / 活性汚泥由来物質 / 微生物産生物質 |
Research Abstract |
実験室内において人工下水を用いて活性汚泥プロセスを運転し、水理学的滞留時間が処理水中の溶存有機物濃度に及ぼす影響について検討を行った。また、処理水中の有機成分の濃度およびそこに含まれる脂溶性揮発性成分の組成について検討を行った。 活性汚泥プロセスは、水理学的滞留時間を通常の下水処理システムと同じ6時間に設定した系(SHRT系)と48時間に設定した系(LHRT系)とを運転した。処理水中の溶存有機態炭素濃度はSHRT系では平均7.7mgC/L、LHRT系では平均19.3mgC/Lであり、LHRT系の方が高かった。 処理水中に存在する溶存有機化合物について、ジクロロメタンを用いた液液抽出を行い濃縮した後、ガスクロマトグラフ・質量分析法により一斉分離・同定を試みた。50種以上の化合物が同定された。SHRT系とLHRT系ではLHRT系の方がより多くの種類の化合物が検出され、また、双方で検出された化合物はLHRT系の方が高濃度検出されることが多かった。しかし、SHRT系でのみ検出された化合物もあった。また、検出された化合物の種類や量は同じ系列でも試料採取日により異なっていた。 検出された化合物の多くは脂肪酸であり、これは細菌の細胞膜のリン脂質が分解されることによって生成されたものと考えられる。また、安息香酸やアニリンの誘導体、イソシアン酸フェニル誘導体、フタル酸ジアルキルエステルといった芳香族環をもつ化合物も検出された。フタル酸エステル類は環境中にも多く存在し、実験室内の大気にも存在するので、試料の汚染により混入した可能性は否定できない。しかし、LHRT系のみで検出される場合もあったので、LHRT系の微生物群集がこの化合物を合成していた可能性は否定できない。
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