Research Abstract |
現在の都市下水システムにおいて,最初沈殿池から越流してきた懸濁性有機物および溶解性有機物の処理は,すべて生物処理に依存しており,その負荷量は大きく,変動幅も広いとされる。処理水の水質を安定に維持管理するためには,生物処理プロセスへの負荷量を減らすとともに,負荷変動を極力少なくすることが望ましい。最初沈殿池越流水に含まれる浮遊懸濁物を除去することができれば,生物処理への負荷を削減でき,溶解性有機物は生物処理が容易であることから,処理水の水質管理が容易になり,処理時間の短縮化も期待できる。したがって,都市下水の懸濁物を短時間で除去できる処理プロセスが開発されれば,下水処理場の水処理システムに与えるメリットは,極めて大きい。 本研究では,生物処理プロセスの前段において,懸濁物除去を目的とした泡沫分離プロセスを配置し,後続する生物処理プロセスには中空円筒状ろ材を充填した生物ろ過槽を導入した泡沫分離・ろ過システムプラントを構築し,都市下水の連続処理を実施した。得られた知見は以下の通りである。 (1)泡沫分離プロセスにおける、最適運転条件は次の通りであった。適切な処理条件は、アルミニウム塩凝集剤(PAC),添加量20mg-Al/L;カゼイン添加量,10mg/L;泡沫分離平均滞留時間,6分;原水流量,10ml/分。泡沫分離プロセスは,最適運転条件下において,僅か10分間の処理時間で,安定して約85%の懸濁物除去率が得られた。 (2)泡沫分離プロセスで除去できなかった残留懸濁物および溶解性有機物は,生物処理プロセス(水理学的滞留時間,2時間)を通過することによって良好に処理された。処理水の平均水質は以下の通りであった。濁度,5度;SS,6.5mg/L;BOD,15mg/L;大腸菌群数,2.4・10^3CFU/ml;全リン,0.7mg-P/L;界面活性剤,0.5mg/L。 泡沫分離・ろ過システムは,従来の下水処理システムと比較して,約1/3倍の処理時間で下水道からの排水基準項目であるpH,BOD,SS,および大腸菌群数の全て項目において基準を満たすことが可能であった。本システムは,下水処理システムとして十分に利用可能であることが明らかとなった。
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