2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
11680579
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 裕司 姫路工業大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (80254457)
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Keywords | 干潟 / 珪藻 / 環境指標 / 縄文海進 / 海水凖変動 / 完新世 |
Research Abstract |
本研究では、環境指標生物としての珪藻の有用性に着目し、縄文時代の干潟堆積物中に特徴的な珪藻遺骸群集と現存干潟のそれとの比較から、現存干潟の環境を地史的な観点から捉え直し、その特性の考察を試みる。一方、縄文時代は後氷期の海面上昇期に相当し、約6000年前の縄文海進ピーク時以降の相対的海水準変動は、氷床の融解に伴った地球規模の地形変化と局地的な地殻変動の双方を反映する。縄文時代の干潟堆積物の高度分布は、過去の相対海水準の位置の認定に役立つ。このような相対海水準の認定は、ミレニアル・スケールにおける沿岸地域の環境変動の解明に不可欠である。 以上の観点から、平成13年度は、昨年度および一昨年度に実施した調査の試料分析と古環境の解析を進めた。縄文干潟を特徴づける指標珪藻Pseudopodosira kosugiiの現存干潟における分布調査から、前浜干潟から潮間帯上部の塩性湿地への推移帯が、縄文時代以降、とくに高度成長期の沿岸の埋立化により消失したこと、そしてその推移帯こそが干潟の生物多様性の保全にきわめて重要であることを示した。その成果は第五回世界閉鎖性海域環境保全会議(EMECS2001)において発表した。また、古環境解析の成果の一つとして、珪藻ならびにイオウ分析から推定される縄文時代の相対海面の観測値と、ハイドロアイソスタシーの地球物理学モデルから理論的に推定される海面高度との比較から、兵庫県・神戸市西部における沿岸テクトニクスを明らかにした。その成果は日本第四紀学会2001年大会で発表するとともに、専門の国際誌Quaternary Science Reviewsに掲載された。さらに、岡山平野において採取した堆積物中での指標珪藻の出現状況から、完新世後期の相対海水準高度を明らかにした。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Hiroshi Sato et al.: "Holocene uplift derived from relative sea-level records along the coast of western Kobe, Japan"Quaternary Science Reviews. Vol.20. 1459-1474 (2001)
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[Publications] Hiroshi Sato: "Late Holocene diatom assemblages and sea-level observation at a site in Okayama City along the northeastern coast of the Seto Inland Sea"Nature and Human Activities. (in press). (2002)