2000 Fiscal Year Annual Research Report
FT-ICR質量分析法によるタンパク質間相互作用部位の構造解析
Project/Area Number |
11680619
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Research Institution | RIKEN (The Institute of Physical and Chemical Research) |
Principal Investigator |
明石 知子 理化学研究所, 生体分子解析室, 先任研究員 (10280728)
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Keywords | タンパク質間相互作用 / 重水素交換 / 質量分析法 / cystatin / 脂質ミセル / melittin |
Research Abstract |
タンパク質の相互作用部位の解析を可能とする、重水素(H/D)交換反応と高磁場FT-ICR質量分析法(FT-ICR MS)を組み合わせた新たな方法論の構築を目指し、卵白cystatinがその標的酵素であるpapainと結合することによりもたらされる構造変化について解析を行った。その結果、以下のような事を明らかにした。 1.cystatin-papain複合体の形成により、cystatinのN-末端部分10残基のアミド水素のH/D交換は大幅に抑制されたことから、この部分のアミド水素はpapainとの複合体の形成において新たに水素結合を形成していることがわかった。 2.複合体形成により、cystatinのhairpin loop部分Pro(113)-Gln(107)のアミド水素のH/D交換反応は、N-末端部分の様には顕著に抑制されなかった。この部位は疎水性相互作用により複合体形成に関与するものと考えられる。 これらは、NMRやX線結晶解析の結果とよく一致するものである。 N-末端の不揃いなcystatin(N-末端5〜9残基が欠失しているものとfull lengthのものの混合物)について、papainとの複合体の形成を、エレクトロスプレー(ESI)FT-ICRMSで解析したところ、N-末端が欠失しているものは複合体の分子量関連イオンがほとんど観測されなかった。これは複合体の形成にはN-末端部分が重要であることを示しており、上述1.で得られた結果とよく一致するものである。 次に膜タンパク質の構造解析を目指し、モデル系として脂質ミセルとの相互作用によるペプチド(melittin)の構造変化に関するH/D交換反応とFT-ICR MSを用いた解析に着手した。melittinは脂質ミセルの存在下にはH/D交換反応が大幅に抑制され、脂質非存在下とは異なる安定な構造をとっていることが確認された。
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[Publications] S.Akashi and K.Takio: "Evaluation of Binding Affinity of N-Terminally Truncated Forms of Cystatin for Papain with Electrospary Ionization Mass Spectrometry"Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan. Vol.48,No.5. 346-352 (2000)
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[Publications] S.Akashi and K.Takio: "Characterization of the interface structure of enzyme-inhibitor complex by using hydrogen-deuterium exchange and electrospray ionization Fourier transform ion cyclotron resonane mass spectrometry"Protein Science. Vol.9,No.12. 2497-2505 (2000)