1999 Fiscal Year Annual Research Report
RGSタンパクの加速作用のパターン決定機構に関する研究
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11680647
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
斉藤 修 財団法人 東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 主事研究員 (60241262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田桐 恵 財団法人 東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 主事研究員 (10260308)
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Keywords | Gタンパク / RGS / 脱感作 / カリウムチャネル / 受容体 / 伝達物質 / 脳 / 神経 |
Research Abstract |
これまでの我々の研究から、神経特異的三量体Gタンパク制御因子であるRGS8とRGS7は、N末配列に特徴的な違いがあり、また機能的に異なった作用をもつことが判明している。即ち、RGS8はGタンパク応答のオン過程とオフ過程を顕著に加速するが、RGS7はオン過程は顕著に加速するが、オフ過程の加速能力は低いのである。またRGS8で起きるリガンド存在下での急激な脱感作を、RGS7は顕著には引き起こさない。このRGS8とRGS7のGタンパク応答の加速パターンの制御機構を明らかにするのが、本研究の目的である。 今年度は、Gタンパク応答のアクセルパターンはRGSタンパクのどの部位が決めているかを調べていくため、まずRGS8のN末配列に注目した。RGS8には、RGSドメインに加え、特徴的な35アミノ酸からなるN末配列が存在する。このN末配列は、RGS4、5、16のN端にもよく類似した配列が見出され、細胞内でのGタンパク調節に役割を果たしている可能性が考えられる。そこで、このRGS8のN端配列にどのような機能があるか検討した。 1、哺乳類のRGSタンパクの幾つかは、イーストに発現させるとGタンパク共役反応であるフェロモン応答を脱感作できることが報告されている。そこで、RGS8がイーストのフェロモン応答を脱感作するかどうか、またRGS8のN末配列がGタンパクとの直接の反応部位ではないが、RGS8の脱感作作用の発現に関与しているかどうか、正常RGS8とN末35アミノ酸を欠失した変異体RGS8を発現させて検討した。その結果、RGS8にはフェロモン応答の脱感作能があること、さらにRGS8はそのN末を失うと、明らかに脱感作の効率が低下することが判明した。しかし、in vitroの結合実験によって、N末を欠失したRGS8タンパクは、正常RGS8タンパクと全く遜色のなくGαに結合することが分かった。このことから、RGS8のN末配列には試験管内の反応では検出されないが、生体内で効率的に作用する際に重要な何らかの機能が隠れていることが示唆された。 2、Gタンパク制御型内向き整流性K^+チャネル(GIRK)系を用いて、RGS8のN末配列がRGS8の示すGタンパク応答の加速パターン調節に如何に関わっているかを検討した。カエル卵母細胞にGIRK、Gタンパク共役受容体、RGS8あるいはN末欠失RGS8を発現させ、K^+チャネルの変化を解析した。その結果、リガンド添加及び除去に伴うオン・オフの加速については、どちらも著しい加速作用を示した。しかし、興味深いことに、RGS8の示すリガンド存在下での急速な脱感作は、N末の配列を欠失することよって大きく減少することが明らかになった。即ち、RGS8のもつGタンパク応答のパターン調節のうち、リガンド存在下でおこる急速な脱感作は、RGS8のN末配列に依存したものであり、この配列のないRGS7は、この作用が弱いものと考えられた。このRGS8N末配列が、どの様な機構に関わってGタンパク応答を制御しているかは現在全く不明で、今後はまず細胞内分布制御と関連しているかどうか検討していく。
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